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▼ 努力

私は哲くんがいつも学校で素振りしている場所に今日もまたついていく。今日はなんだか顔の怖い人に会ったし、なんだかこれから青道野球部の練習を見学するの気が引けちゃうな…。
なんでかって?そりゃもちろん、初対面の人とうまく話せないから!
でも今日あったあの人は元々そういう顔らしいのは分かったけど、やっぱり怖いものは怖いんだよね〜。

そんな考え事の最中に、哲くんは素振りをやめて私を見ていた。

「どうしたの?哲くん」
「いや…なんだかお前が自問自答してるみたいだったから、気になってな」
「何、自問自答って…相変わらず面白いなぁ、哲くんは」

そして哲くんを見て笑うと、哲くんは不思議そうだ。そんな様子に私は更に笑ってしまった。
…それにしても哲くん、なんで分かったんだろ?

青道を見学して、哲くんの素振りを見守るようになってから、何日か経つ。昨日から青道も学校が始まってしまっているのに、未だ私はここにいる。長野なんてもうとっくに夏休みは終わっているっていうのに…何やっているんだろうか。

突きつけられる現実が…怖いのかもしれない。



「たまるか....このまま終わってたまるかよ」

微かに聞こえたその声の方を振り向くと、あの顔の怖い人が歩いてきていた。バットを持っているから素振りをするのだろう。それにしても終わってたまるかって…どうかしたのかな?

「お前、昼間の…」
「…どうも」

私が会釈をすると顔の怖い人は、今度は哲くんを見る。

「何やってんだこんな時間に..、お前通いじゃねーのかよ。もしかして毎日残ってやってたのか?」
「…」

もしかしてこの人、哲くんが素振りしてたこと知らないの?

「1日....500スイング..やってるんだよ」
「はぁ!?」
「学校で300..、....家で200..」
「マジかよ!」

たしかに500スイングは私も聞いたときは驚いた。努力家だなぁ…本当に。

「この学校に来ると決めた時からのノルマ、これが続かないようじゃ、ここでは生き残れない」

これが哲くんの覚悟なんだ。

「体が慣れてきたら、もう少し増やそうと思う..」
「増やすな!バカ」

なんだか微笑ましい光景…
そんな時また足音が聞こえてくる。

「やっぱここに来るのは、みんなそれなりの覚悟があるんだよね..」

男の人にしたら随分と小柄な人とおにぎりを食べた大柄な人が来た。

「俺達も付き合っていい?先輩のイビキうるさくて..」
「増子..小湊..」

厳しい練習の中、こうやって生まれていく誰よりも上手くなりたいと思う心や熱意、そして仲間、微笑みあう哲くん達を見ていいなと心の中で私は呟いた。

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