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▼ あの後の出来事 3

『あぁ〜!!御幸一....』

でかい声を出しそうになった俺を、御幸は慌てて制止する。

『でけぇ声出してんじゃねぇバカヤロォ!バレちまうだろーが!』
『すっすいません』

ビ..ビックリしたぁ〜
まさか、こんなところで再会するとは....
そう思っていると、御幸は不思議そうな顔で俺を見ていた。なんだこいつ。

『つーかさ、お前なんでここにいんの?』
『え!? なんでってここに入学したからに決まってんだろ?』

何をふっとぼけたことを...

『あ..そーか.... ははっ そんじゃーお前初日から遅刻かよ!相変わらずの大物っぷりだな』

笑いを堪えるその様子に俺は腹が立ってきた。たぶん、俺以外だって腹が立つ。

『アンタには言われたくねぇ!!』
『はっはっはっはっ
って..そんなことよりお前..今の状況かなりやばいぜ!ウチの監督、見ての通りおっかねぇ人でよ!特に遅刻には死ぬほど厳しいんだよ!
ウチには部員100人ほどいるからな..へたすりゃ、お前3年間名前すら覚えてもらえねーぞ!』

マジかよ…
その言葉を聞いて俺は血の気が引いた。

『ヤベェじゃん!俺めっちゃヤベェじゃん!!』
『うん!めちゃヤベェ!』
『やっぱここは土下座でもした方が....』

焦る俺とは対象的に、御幸は落ち着けと言う。

『今さら慌てても仕方ないさ....正直に謝ったところで遅刻は遅刻。どう転んでも罰は受けるだろう。
だが....誰にも気付かれずにあの列に忍び込めばどうなる?』

御幸の作戦はこうだった。
1年達が自己紹介をしている二列があった。その前列の一番奥の奴が挨拶を始めたら、当然全員の視線はそいつに行くだろう。

その瞬間に
『忍者のようにすばやくそして静かに列へ忍び込め!』

に..忍者〜!?

『....て..いいのか それ? バレたらもっとヤベェんじゃ....』
『大丈夫だ!俺は去年成功した!!』
『経験者かアンタ〜』
『こんなとこで3年間を棒に振りたくないだろ? 俺を信じろ!』

その時、俺の脳裏にはあのときの俺のボールが御幸一也のミットに収まったあの瞬間が過った。今まで味わったことのなかったあの感覚。忘れたことはない。あれを引き出してくれたのは、紛れもないこいつなんだ。

『分かった』

もう、迷いはなかった。

─‥
『いいか....タイミングは一度きりだぞ..』

その時、挨拶をする部員は二列目になった。

"今だ 行け!!"

言われた通り忍者のように〜と走っていると、信じられない声がした。

『あ〜〜、こいつ遅刻したのに列に紛れ込もうとしてるぞ〜〜〜』

必然的に俺に集まる視線。
いつのまにかに上級生達の列に紛れ込んでいる御幸一也。てめーさっきまで俺の隣にいただろ。何でそんな所にいるんだよ。
てゆーか、....自分が助かるために俺を囮にしたんじゃ....
そうして考えているうちに監督は、ぶちギレたご様子でこちらを見る。何、こんなの完全にヤのつく人じゃねーか。

『初日から遅刻とはいい度胸だな小僧....』
『え..』
『しかもバレないように忍び込もうとするその腐った根性....練習が終わるまで走っとれい!!』

ひい〜すべてが裏目に〜〜

『ヒャハハハ あいつバカおもしれぇ〜』
『それからこの男と同室の上級生 どさくさに紛れそこに並んでいる大バカ者
お前らもだ

こうして、俺の新しい生活は最悪の形で幕を開けた─‥

『てめぇの言うことはもう二度と、信用しねーからな!』
『はっはっはっ ありがとう』
『誉めてねーだろ。今のはよー』

─‥

私はその話を聞いたとき、声が出なかった。

「...それから監督に謝らなかった栄太郎は、監督に要求された遠投がフェンスまで届かなくて見習い部員呼ばわり....」
「...おう。」
「ばっ....馬鹿じゃないの!? でもそれ以上に御幸さんが信じられない!」

あのイケメンさんの御幸さんが!?
そんな人だったなんて...前会ったときはこうもっと...落ち着いた優しい人のイメージだったのに....

「あれ?お前御幸にも会ったことあったのかよ?」
「うん、いい人だったよ。」
「どこがだ! 悪いやつだ、あんなやつ。」

うーん、そうなの!?
私のイメージを遥かに越える恐ろしい一面と言うか、茶目っ気のある一面を知ってしまった。でも、御幸さんはイケメンさんだから許せ...って何言ってるの私は。やっていいことと悪いことがあるじゃないか。

「だったら洋一さんは?」
「あの人は....性格は悪いけど..」

けど?

こんなことになってるのに、栄純は断言はしない。そんな様子に私は首を傾げた。

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