大好き! | ナノ


▼ 友達になろう

友達作りについて、私は3年生の皆に心配されていたわけだけど、はっきり言ってそいうものは本当に自信がない。
今まで長野では人が少なくて小中学校と同じメンバーだったし、新しく作る必要なんてなかった。ちなみに若菜ちゃんと栄純と仲良くなったのは小学校に上がる前だった。初対面の人とは上手く話せないのはあの頃もそうで、お兄ちゃんが引きずって私を連れ出したのは言うまでもない。

そんな私が友達作りなんて...

「気が重い。」
「そんなに?友達なんて気づけば出来てるものじゃない。」
「貴子さん、それ友達作りの苦労をしたことがない人の常套句だから。」

はぁーと私が溜め息をつくと、貴子さんは困り顔。こんな顔させたくはなかったけれど、仕方がないよ。困ってるのは本当のことだし。

入学式が終わり、ブラブラと歩いて帰ろうとしていたら午後から始まる部活に備えて早めに来ていた貴子さんと出会った。女の子同士の方が話しあえることは多い。だから貴子さんに相談したのだけれど…私、考えすぎなのかな。
そう思っていたら、貴子さんはそう言えばと言ってきた。

「伊佐敷君達には相談はしないの?」
「うん、しないよ。」

私の即答に、貴子さんは目をぱちぱちとさせたあと直ぐに笑った。

「ふふっ、そういうとこ相変わらずね。」
「まあね。それに.....相談したら相談したで色々とやり過ぎちゃうような気がするし。」
「たしかに。」

貴子さんのその言葉で私たちは顔を見合わせて、笑った。

そのあと、久しぶりにゆっくり貴子さんと話して、貴子さんがもう行かなきゃと言うまでの時間はあっという間だった。
別れ際に貴子さんは言った。

「たしかに桜の性格上時間はかかるかもしれないけれど、焦ることはないのよ。」
「...貴子さん。」

「大丈夫よ、桜なら。」

その時、貴子さんの言葉は私の心にスーッと染み渡ったっていった。

気負いすぎていたのかも...

─‥

あれから2日後、クラスの人とは少しずつ話せるようになってきた。貴子さんの言った通り焦ることはないんだと、ちょっと思った。
そして今日は初めての体育がある日だ。体育と言えば個人競技もあれば、団体競技もあるはずだ。これは友達を作る絶好のチャンス!なんだけど、空回りしそうな気が...しなくもない。

「じゃあ隣同士でペア作ってストレッチするぞ〜」

そんな体育の先生の、爽やかというより野太い声に皆はそれぞれペアを作る。ガヤガヤとしている中、私は緊張して隣を見ると髪の長い女の子もこちらを見ていた。髪が長いと言っても肩にかかる程度か。
それにしても、なんて話しかければいいのだろうか。あ、それより名前はちゃんと知っていた方が印象はいいよね。えーっと、たしか...窓際の席だから、うん。わかった。あとはなんて話しかければいいかだ。なんだろうな...

「麻日奈さん、よろしくね。」
「え!」
「え?」
「あ、ごめんね。私の名前知っていてくれたことに驚いたの。」

びっくりしたと言うと、同じクラスなんだから知らないわけないよとにっこり笑ってくれた。
優しい.....。嬉しいけど、私はこの子の名前を考えなきゃ出てこなかった。申し訳ないな。

「どうしたの?暗い顔して。」
「え!いやいやいや、なんでもないよ!」

そんな会話をしている内にストレッチが始まり、私達も前の先生の動作の真似をする。
何か話しかけたいけど、どうしようかな。
さっきと同じことを考えながら隣の子をジッと見つめていた。

─焦ることはないのよ‥

貴子さんの言葉が頭に過り、少し落ち着いてきた。
どうせ私なんて色々考えたって顔に出ちゃうんだ。洋一さんだってそう言ってたし。ここはストレートにいこう。

「吉川さん。」
「ん、何?」
「友達出来た?」
「え?」
「私と....友達になって...くれたら..嬉しい..」

緊張と不安で途切れ途切れの言葉は聞き取りづらかったはず、でも吉川さんは直ぐに笑ってくれた。

「もちろん!」

高校に来て初めての友達。これからなかよくなれるといいなあ。とか、考えられるようになれるとは嬉しすぎる。

「さっきから思ってたけど麻日奈さん、顔に出やすいねぇ。」
「やっぱり言われた…それより、吉川さん。私のことは桜でお願いします!」
「...桜ちゃん。」
「YES!」

この後、私達はストレッチがおろそかになり怒られたのであった。ほとんど私のせいだけど。

prev / next

[ bkm/index]



第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -