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▼ 入学式と再会

朝の光が眩しくて目を覚ました。カーテンを開けると、周りの景色がもう違うことを改めて実感させられ、無意識に溜め息をついていた。

昨日も優さんに会いに行って、また少し話をした。
押し掛けた時は拒絶されてしまってちょっと悲しかったけど、今はなんとか受け入れてくれている。毎日通うことはできないけれど、手伝うことがあるなら何でもやると言って、あれから2回は行った。2回とも優さんのお父さんに気が散ると言われてしまったけど。
差し入れとか持っていけば部屋から出されないかな?あーでも、邪魔はしたくないし。...優さんは苦笑いして、外で待ってろって言うし。

「おはよう。」

パジャマ姿でリビングに行くと、もうすでに起きていた哲くんのお母さんと将司がいた。

「早いねー、あれ?哲くんは??」
「もう部活に行ったよ。」
「お前が起きるのが遅いだけだ、別に早くない。」
「いちいちツッコミいれなくていい!」

そっか、もう練習に行ったんだ。そう言えば栄純は今日から練習だよねー、もう挨拶とかしたのかなぁ。
そんなことを呑気に考えながら、私は欠伸をした。

─‥

入学式の日に久しぶりに栄純に会った。

「あれ?栄太郎??」
「…」

なかなかブレザー姿がきまってる栄純に声をかけたのに、無視された。学ランもいいけどブレザーも新鮮でいいねって言おうと思ったのに。なんて奴だ。

「おーい、無視するなー。」
「…」

なんか腹が立ったから私は栄純の近くまで歩いていき、ポンポンと肩を叩く。簡単に振り向く栄純の頬に私のさした指があたりニンマリ笑うと、栄純はイラっとした顔をした。

「おはよう♪え・い・た・ろ・う。」
「お前それわざと言ってるだろ。」

一緒にクラスは何組かと探してみたら、なんと私と栄純は同じクラスの1-C。小・中と一緒な私達はやっぱりこうなるのねと同時に溜め息をついた。

「どう? 青道野球部は?? うまくやれてるの?」
「別に…」
「…なんかあった?」

なんだか元気がない栄純。
今日の朝も練習だったみたいだし疲れてるのかな?
教室に着いた途端にイビキをかきはじめるものだから、暇な私は時間まで学校探検に行くことにした。

やっぱりキレーな校舎〜
今日からここに通うんだ、ワーイと喜びスキップをしていると大きな人にぶつかった。

「ごめんなさい。」

慌てて頭を下げ、てっきり誰もいないと思ってしていたスキップを見られた恥ずかしさで顔をそらしていると、あれ?君…とぶつかった人に声をかけられた。
どこかで聞いたことのある声だ…と思って恐る恐る顔を見ようとすると、案外大きい。
…あれ、この人。

「あ!入試のときの!降谷君だよねたしか。」
「うん。」

表情を全く変えない降谷君。

「よかったね、お互い受かって。」
「うん。.....ねぇ..」
「?....あ、もしかして私名前教えてなかった?」

頷く降谷君。
まさか自分の名前を名乗るのを忘れてたなんて...結構失礼だったな、私。
ごめんね、降谷君。
そんな風に心の中で謝罪をしつつ、私は降谷君の前に手を差し出した。

「麻日奈桜です。名前は好きなように呼んで。たまに野球部に応援にいくから、また会ったらよろしくね。」
「うん、よろしく。」

私が笑うと降谷君は遠慮がちに手を出してきた。握手をした時、降谷君は表情を変えはしないけど嬉しいんだという気持ちが伝わってきた。
表情には出てないのに分かりやすいなぁ...。

「ねえ、降谷君。一緒に校舎を見て回らない?」

頷く降谷君は此方に図書館があったよと、指を指した。2人で歩いていると、僅かに開いた窓から春の香りがして、長野も桜は咲いただろうかそんな考えが少しだけ頭を過った。
でも、降谷君のほくほくとした雰囲気につられ私もいい加減前を向こうと思うことが出来たのは、本当に嬉しかった。

「(よかった、この子にまた会えて。)」

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