大好き! | ナノ


▼ やってきたよ高校生活!! 1

私は結城家にお世話になることになった。当然のように迎え入れてくれる哲くん達には、本当に頭が下がっちゃう…。
お父さんは2人もお世話になることはいけないとか言って仕事場近くに住むことになり、別々になった。

変なところは律儀で、本当に変人だと言うと、
『俺とそんなに住みたかったかぁ。残念だな桜、俺も残念だ。』
『…』
『え!? 無視!?』
『一緒に…家族だからいたいとか言ってたくせに…』

『大丈夫だ、いつでも会いに来るから。』

お父さんはそう言って私の頭をグシャグシャと掻き回した。今日はよくされるなぁ…。
その時見せたお父さんの笑顔があまりにも子供っぽくて、どこかお兄ちゃんを思わせた…
お父さんが出ていくとなんだか無性に寂しくなってしまったけど、これから始まる高校生活はやっぱり楽しみ!

─‥

お世話になる身なんだから、少しはなにかやろうと思い、家事のお手伝いをしていたら思い出した。

「あ!」
「どうしたの?」
「栄太郎が来る。」
「えいたろう?」

そう言えば、今日は栄純もこっちに来ることをすっかり忘れていた。
ごめんね、あまりにも感動的な別れをしたから、ついね。
皆を驚かせついでに会いに行ってあげよーっと。

その頃の栄純─‥

桜が舞散る中を俺は皆と歩いていた。旅立ちの日だから。
桜のやつは、俺が出ていくってのに見送りに来なかった。あいつ泣いてんじゃねーのかとか思ったけど、いつの間にか仲直りしてたみてーだから後のことは若菜に任せた。

「あはは」
「けど、あの時はビックリしたよー。」
「本当!本当!」
「夜いきなり家に来て、ビンタしてくれだもん!」
「ありえないよ普通!」
「ウチのバーチャン泥棒と間違えて通報しかけてたよ!」
「みんなの力を注入してくれって… 本当栄ちゃんらしいよね!」
「るせぇ!」

今思い出すと恥ずかしいが、…桜の家でのダブルビンタは痛かった…。

駅前には青道の高島礼って人がもう来ていた。

〈15:03発、東京行きにご乗車のお客様は━‥ 2番ホームに列車が━━‥〉

聞こえてきたアナウンスの声。
そろそろか…、皆は俺に声をかけてくれる。

じいちゃんは
「栄純、自分に負けそうになったらいつでも電話してこいよ!ワシのパワーを送ってやるからな!」
と今まで散々俺をビンタした手をみせる。
佐野っちは泣くし。
「カァ〜バカヤロォー!!さっさと行っちまえ! わははははは」
「まぁまぁ佐野っち!」
校長先生は相変わらず穏やかで…
「メールぐらいしてよね!」
若菜は何故か頬を赤くする。

「がんばれ栄ちゃん!」
「栄ちゃん!」
「がんば..」

急に途切れた言葉に気づき振り返ると、ノブ達は泣いていた。

「バ..バカ、何泣いてんだよ!」
「....あれ?..はは....」
「お前らが泣いたら、栄ちゃんが困るだろ....」

お前ら....

「ご..ごめん。....でも..俺..栄ちゃんにずっと迷惑かけてきたからさ....。
肩は弱いし....ボールはすぐ後ろに逸らすし..
こんな頼りないキャッチャーじゃ、栄ちゃんの邪魔してるんじゃないかって..ずっと思ってたから....」
「ノブ..」
「バカ...それなら俺だって最初はサードの方に走ってたし。」
「アキオなんてバット持つ手が逆だったんだぞ!」

明るい声で笑う皆。
それでもノブの涙は止まらなかった、皆はそんなノブを励ます。

「う..うん。それでもさ....
栄ちゃんは絶対嫌な顔しなかったよね。
とんでもないエラーした後でも、逆にマウンドから大声で励ましてくれてさ....」
「....」
「そんな姿が..すげぇカッコよくて....本当もうさ..俺達にとったら、イチローや松井なんかより、栄ちゃんの方が... ずっとヒーローだったんだよ...」

皆の笑顔にノブの泣き顔に俺は思わず照れていた。

〈まもなく東京行き━━扉が閉まりますのでご注意ください〉

その声に急いで乗り込む。

「全然力になってあげれなくてごめん。」
「へへっ..でも俺達さ....」

「本音言うと栄ちゃんと一緒に....もっと野球がやりたかった....」

泣きながら言うその言葉を聞いた瞬間、電車が動き始めた。

え....

「がんばれ!」

お..おい....待てよ....

「栄ちゃん!」
「がんばれ栄ちゃん」
「がんばれ!」
「栄ちゃん がんばれ!」

なんだよ..それ..

「俺達ずっと応援してるからな! ずっと━‥」

「「「「がんばれ!俺達のヒーロー」」」」

バ..バカヤロー。
....お前らそんなこと..一言も言わなかったじゃねーかよ..。遅せぇよバカ、..遅せぇよ。

俺はあいつらが見えなくなってもずっと、泣いていた、あいつらが見えていた扉の前で━‥

「さ....そろそろ席につきましょ....」
「....っく..
こ、これが..あんたの言ってた覚悟ってやつかな....」

俺の頭にあったのはあの時の、高島礼が青道にいったときに教えてくれた言葉で。

『誰よりも野球がうまくなりたい。その一念だけでわずか15歳の少年が親元を離れ、より厳しい環境で己の能力を磨き鍛え上げる。私はね....そういう覚悟と向上心を持った選手達を、心の底から尊敬しているわ。』

覚悟…これが、覚悟なんだ。

「お..俺....やらなきゃ....」


“...応援してくれると思うよ。皆、栄純のことを”

...

“当然だよ”

桜..お前の言ってたことってこういうことだったのか....?


涙が止まらない、あいつらが応援してくれたから...。

「あいつらの代表として、絶対..甲子園に行かなきゃ....」

prev / next

[ bkm/index]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -