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▼ 何度でも

夏休みが終わる何日か前、私は長野に戻ってきた。
この夏はなかなか勉強できて私としては大満足。洋一さんにはこの暑いのによく頑張るなとほめてくれた。
…困ったことがあったとすれば、内緒にしていた青道を受験しようとしていることが、洋一さんにばれてしまったということ.....。

『あー暑い暑い暑い暑い暑い暑い、』
『うるせぇ!!』
『だってムシムシして...もう...だめで..す...』

私が窒息死するマネをすると、洋一さんは私の持っていた勉強用具の中から隠し持っていた貴子さん推薦の野球の本を、的確に抜き取ってしまった。

『あ!なにするんですか。泥棒はいけませんよ。』
『誰が泥棒だ!何で受験勉強してるヤツがこんなもん持ってんだよ、....ん...?』

洋一さんは本を見てあるページで止まった。

『お前これ...』
『え?』

ハラリと落ちた紙を見て私は固まった。
青道のパンフレット、学校紹介のようなものを挟みっぱなしだった...。

『何で今さらこんなもの見てんだよ。』
『き、気分転換....?』
『.....!お前まさか青道に来ようとしてるのか!?』
『そ、そそ、そんなわけないじゃないですか!』
『あからさまに目をそらしすぎなんだよ。』

ペシッと叩かれる。
あー結局バレてしまった…。こうなったら仕方がないのでお願いをしよう。

『洋一さん、皆には内緒ですよ。驚かしたいので!』

ニコッと笑って言うと洋一さんに呆れられた。

─‥

私は長野ではやらなきゃいけないことがある。若菜ちゃんや皆に青道へ行くことを伝えなきゃいけないんだ。

「若菜ちゃん、私は青道へいくよ。お父さんも東京へいくって言ってくれたんだ。」

その時、私は覚悟はしていたけど若菜ちゃんの顔が驚いた顔の後にすぐ悲しそうに歪んだから、少しだけ気持ちが揺れた。

でも....それでも。

「もう決めたの。だから.....」
「ごめん、こんな顔して。私お祭りの時、何も言わないって言ったくせに…ホントごめん。」

そう言うと私に背を向ける若菜ちゃん。

「寂しいじゃない...桜も栄純も行っちゃうなんて、もう今みたいには簡単に会えなくなるんだよ、いいの?」

貫きたい想いがある。
支えていきたい人がいる。
ずっと側で応援していたい人達がいる。

寂しくないわけはない。

でも誰かのために、自分のために、やっと決められたことだから.....

「うん、何度でも言うよ.....何度でも。」

いつも泣くのは私なのに、今日に限っては若菜ちゃんが泣いた。私はただ黙って側に居るだけしかできなくて、その日私は若菜ちゃんの背中をずっと横で擦っていた。

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