▼ ずっとこうしていたい
それから少しお話をした後、私は1人で帰ろうとした。目が腫れてるぞと心配されてしまって、大丈夫と笑っていたらゴンッと音がした。
純さんだ。
いきなり出てきた純さんに驚いていたら、ぞろぞろと2年の皆が出てきた。
な、なんで!?
「楽しそーだなァ!!! 倉持ィイ!!!!!」
「純さん、皆どうしたの!? って洋一さん大丈夫?」
「だっ大丈夫なわけ....モガッ」
「大丈夫だよなー倉持!」
もしかして皆、私たちの会話を聞いて…!
そう思った途端に、頬っぺたが熱くなるのが分かった。皆はニヤニヤと私を見る。
「青春してるな、桜。」
「お互い顔真っ赤にして、照れてるし。」
「や…やっぱり!皆聞いてたんだ!!」
「「「「「もちろん。」」」」」
「やめてよ、盗み聞きなんて!!!」
からかわれているうちに、純さんと洋一さんのじゃれあいが過激になってきた。そろそろ止めたほうがと思って皆を見ると、肩を竦めたり笑ったり、いいぞもっとやれとか言うし。皆が騒いでいる内に、亮さんが小声で話しかけてきた。
「皆、桜のことずっと心配してたんだよ?」
「そうなの!?…やっぱり顔に出てたんだ。」
「バレバレ。無理してたの全員気づいてたよ。」
「…はあ、これでも気をつけてたのに。」
「桜には無理だね。」
「…」
あ…そっか、だから皆来てくれたんだ。今日がお兄ちゃんの命日で、独りで私が泣くかもしれないって思ったのかな?
「なんか皆、私に甘すぎるんじゃない?」
そう言うと亮さんはそうかもねと笑う。
「でもさ、それだけ大好きなんだよ。桜のことを妹みたく可愛いって思ってるんだよ。」
妹…か。
そんな単語、もう二度と自分に向けられて言われることのないものだって思ってたのにな。
「本当にありがとう、皆。」
呟くように言ったその言葉と微笑む私に、急にどうしたーと皆不思議そう。でも亮さんはいつものように笑みを浮かべていた。
こんな皆をずっと側で応援したい。
ずっとこうして皆といれたらいいのに。
「…ま、全部倉持に先を越されちゃったけど。」
「先輩差し置いて生意気なんだよテメェはぁあ!」
「ねー皆、やっぱり止めない?」
「「「「止めない。」」」」
笑う皆とキレた純さんと嘆く洋一さん。
う〜ん…上下関係ってこういうものなの?
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