▼ 決勝前夜
【原田雅功視点】
鳴が不満げな顔をしているのに気がついて、きっと面倒なこと考えているに違いないと思い気がつかないふりをしていたら、そんなことお構いなしに文句を言ってきた。
「あーあ、桜のことこんなに好きなのに、全然俺相手にされてないじゃん。雅さんのせいで!」
何を訳のわからないことを言ってるんだ、こいつ。と思い、無視を決め込んでいたら。
「雅さんだって桜のこと好きなのに、そういうとこだけ奥手だからラッキーだと思ってたのに…」
「うるせぇ、さっさと寝ろ。」
なんで普通にバレてんだよ。
「えー、つまんない。」
「もし明日、半端なピッチングしたら許さねーからな。」
「分かってるよ。」
しぶしぶ出て行こうとしていた鳴はふと気付いたように俺を見た。
「もしそうたが生きてたら今のポジション譲った?」
「譲る気はねぇよ。」
「ならいいけど。」
そう言って鳴は部屋を出ていった。アイツが何を意図して言ったかなんて考えたくもねぇが、そもそも先輩は俺にレギュラーをとられるような人なんかじゃなかった。
今猶、俺達の心の中で大きな存在として居続ける麻日奈先輩。
葬式の時、もしかしたら桜は先輩のことを忘れてしまいたいとか思ったんじゃないだろうか。俺にはそう見えた。でも、そんな桜がああやって笑えるまでになって、稲実を応援してくれた。
桜にとって先輩が思い出すだけで辛い存在になっていなくて、良かった。
その日俺は安心してグローブの手入れをして明日の舞台に備えた。
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主人公は青道に行くことを決意できました。
もうそろそろ本格的に原作沿いになっていけたらいいのですが、それはもう少し先です。
まだまだ原作の過去編の世界です。
基本的に主人公が愛されていればそれで私は満足なようです。
では、これからもどうぞよろしくお願いいたします。
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