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▼ 稲実 2

「哲くん、頑張ってね。私応援行くから!」
「試合前に皆に会わなくていいのか?」
「うん…私勝つの信じてるから。」
「そうか。」

私の頭をポンッとすると私に背を向け歩き出す哲くん。そんな哲くんの後ろ姿が昔より逞しく見えた。

「頑張って… 皆…」

準決勝─‥

私は対戦相手が稲実と知ってから、青道にはあまり足を運ばなかった。倉持さん達とあんな形で別れて理由を聞かれるのが怖かったから、それに2年の皆に気を使わせたくなかったから、準決勝目前だし。会わないようにと球場の回りをうろうろと歩いていた。
…あれ?ここどこだろう?一塁側か三塁側かよく分からないんだけど。なんか真っ白の人達ばっかり…まさかここ稲実の方!?

「桜じゃん!」

久しぶりに聞く声だ。よく見ると稲実のユニフォームを着た、成宮さんだった。

「成宮さん、え?そのユニフォーム…まさか稲実?」
「うん、そう。俺、稲実入ったんだー」
「知らなかった…」
「うんうん。でもなんで桜がここにいるの?あ!もしかして俺の応援…!!」
「そんなわけねーだろ!」

話があらぬ方向に飛躍しそうになると、間髪いれずに否定してくれた。
久しぶりに会った…、嬉しくてつい顔が綻んだ。

「雅さん!」
「…久しぶりだな」

久しぶりに成宮さんと雅さんに会った。
雅さんとはお兄ちゃんの後輩でお兄ちゃんに会いに行ったとき、雅さんにはよくしてもらったなぁ。成宮さんはお兄ちゃんのメル友で昔、試合で知り合ってからお兄ちゃんとは仲がよかった。私は少し苦手だけど。

「ホントに久しぶり、お葬式以来?」
「「!!」」

雅さんはその言葉におもいっきり成宮さんを叩いた。痛そうだと思い、つい私も成宮さんが叩かれたところと同じところを擦る。

「いったーそんなに強く叩かないでよ、割れたらどうすんのさ!」
割れるわけねーだろ、なんで桜の目の前でそんなこと言うんだよ、馬鹿か!?
「馬鹿って言う方が馬鹿なんだよー、それから桜 そんな悲しそうな顔することないよ。勝つのは俺達だから。そうたもそう言ったと思うよ。」

自信満々に笑みを浮かべ言う成宮さんは、無神経だとも思う。
でも、確かにお兄ちゃんなら言う。
"勝つ"って。
なんか懐かしいな、この感じ。

「ごめんね、私稲実の応援にきたわけじゃないの、青道の応援にきたの。」
「親父さんの母校の応援か?」
「それもあるけど…大好きな人達の応援…かな」

皆を応援する。私だけの応援を。

「そうか…(よかったよ お前が笑えるようになって)」

敵の高校を応援するなんて言ってる私に、嫌な顔をすることのない雅さん。優しいひとだ やっぱり。笑い合っていると成宮さんは不敵に笑う。

「桜、悪いけど勝つのは俺達だから、俺達応援しといた方がいいんじゃない?」
「どっから来る…その自信は。」
「俺が投げるから。」

負けなんて言葉知らないような顔をして、これだから天才は…
私と雅さんは顔を見合わせて溜め息をついた。

「ねーこれで俺達が勝ったら付き合っちゃう?」
「え!?」
「その前に今日お前が先発じゃねーだろ。」
「........」

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