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▼ この人が正捕手?

礼さんにお礼を言い、別れた後、遣る瀬無い気持ちになってぶらぶらしていた。 哲くんがなかなか見つからなかったからっていう理由もあったけど…。

「…倉持さんどこかな?」

つい出てしまった名前に自分でも驚いた。
2年の皆に会いに行きたい気持ちの方が大きかったのに、やっぱり私は倉持さんのことを好きなんだ。でも、今のこんな顔で皆や倉持さんに会ったら余計な心配かけちゃう。…それでも会いたいな、倉持さん。

「なんだよ?」
「え!」

声の主を見ると倉持さんだった。

「何、驚いてんだよ。」
「え…だって今、会いたいと思ったから…」

倉持さんは私の言葉でちょっと照れたような顔をしたけど、

「泣いたあと残ってるぞ」

と苦笑された。

「お前、本当に2年生の先輩達好きだな。」
「はい、大好きです。哲くん達がいてくれたから今の私がいるようなものですから、本当に感謝しているんですよ。…私は応援するだけしかできないけれど。」

ああ、なんて自分はちっぽけな人間なんだろうか、こんな時よく思う。
たしかに出来ること全てを望むわけじゃない、でもこんなことしか出来ないのだから。優さんに何もできない、言えない自分なんて…
つい考え込んでしまった私は、しまったと思い俯きがちになっていた顔をあげる。倉持さんの横顔は寂しそうに見えたような気がした。

「…お前の知らないこと多いな、俺。」
「あ…ごめんなさい。」
「謝ることじゃねーよ。それに俺にだってお前に言えないことあるからな。これでおあいこだろ?」
「…」
「どうした?」

倉持さんは初めて出会ったときからそうだった。
欲しい言葉をくれる。
泣き出しそうな、そんな秘めた思いを見逃さずに拾ってくれる。
そんな倉持さん。

「倉持さんは優しいです。私、好きです。」

正直な気持ち、嘘偽りなき。

「おまっお前!」
「え?」
「真顔でよくそんなこと…」
「え??」
「…あー もういいよ」

真っ赤になった倉持さん、こんな顔は私と倉持さんが付き合いだしてからよく見るようになった。その度にそっぽを向いてしまうけどね。
そんな倉持さんはそっぽを向いたまま言う。

「麻日奈は応援しかできないって確かに言ったけど、お前の応援は俺の…、2年生達の力になる。お前の応援はお前にしかできない …そうだろ?」
「…」

応援か…

─‥

私は気になることがあった。

「倉持さん? 優さんじゃない今の正捕手って誰になったんですか?? 宮さん?」

こういう時、2年生の名前が出てきてしまう。やはり私は2年生贔屓だ。
そんな淡い期待は叶わず、予想外な返答が返ってきた。

「あー1年だ。」
「1年!? え!! そんなすごい人が…私知らない。」
「お前知らなかったのか…。まだ自主練してると思うから見に行ってみるか。」

そう言って歩きだす倉持さんは少し不機嫌そう。その後をついていくわけだけど、そんなすごい人は誰であろうか?倉持さんみたいにベンチ入りしてしかもその人はレギュラー、どんな人だろう?

「麻日奈、あれだ。」
「え?」

倉持さんの指を指す先にいたのはあのイタい人、私に倉持さんを好きだと教えてくれた人だった。
私達に気付いたその人は余裕ある笑みを浮かべた。

「久しぶり、桜ちゃん。」

間近で見るとイケメンさんでありました。

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