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▼ 友人 栄純 1

桜祭りから時は流れ、ついにきてしまった…
栄純達の最後になるかもしれない試合が!

「なんか、早いね。」
「なにがだよ?」
「この試合でもう最後じゃん。」
「おまっ、絶対勝って全国いくんだからそういうこと言うんじゃねーよ!」
「…」

青道を見てしまうと本当にレベルが高いから、赤城中の野球はどう考えてもと思ってしまう。でも、皆がどれだけ頑張ってここまで漕ぎ着けたのかはずっと見てたから分かってる。
勝ってほしい、報われてほしい…

「な、なんだよ。」
「悔いの残らないように全力を尽くしてね、栄太郎!」
「おう!それから俺は栄純だ!」

ってことで試合が始まった。

「栄太郎〜リラックスリラックス〜!」

試合は両校ともに一歩も譲らぬ攻防。

ついに最終回まできてしまった。
だ…大丈夫大丈夫。なんで私の方が緊張してるの。手に汗握る展開につい緊張してしまう。

栄純… 皆…

「皆ー 栄純ー! がんばれー!!!」

これが私の精一杯の声、どうか…

ガッシャァン!
その時栄純の投げたその球はキャッチャーミットの上をすり抜けフェンスに当たった。

〈試合終了─────!! 成嶋中学サヨナラ勝ち!! 両校整列!!〉

あれ? 泣いてるの栄純??あれ?なんか私も…

「す....すまん。お..俺は、お前らを全国に連れていってやれんかった....。」
「え....栄ちゃん..。」
「栄純....。」

栄純.......。
その時ブハハハハと相手の中学の人達は笑い始めた。

「何言ってんだコイツ、本気で言ってんのか?ド田舎の弱小校で何が全国だ、笑わせんじゃねーよ。女がいるようなチームに俺達が負けるわけねーだろ、身の程を知れって..」

あの人達…皆を、若菜ちゃんのことを見下して!!許せない!
乗り込もうと思って辺りを見回しているとある人が目に入った。
あれ?あの眼鏡にあの抜群のスタイル…礼さん?

「礼さ..「おいしょー!!」

ビターン!!といい音が響く。栄純が相手選手にビンタをかました。
…いきなり何をしてるの、あのバカは。

「て..てめぇ何しやがるっ..負けたからって腹いせか、コノヤロォー」
「違う。こいつは俺達赤城中の魂だ!!俺達が届かなかった夢、お前達に託そう…。闘魂注入─!もいっちょ、おいしょー!」

1 2 3... 記録12発。
そこにいる誰もが慌てたりしていた、私はというと呆れていたわけだけど…少しだけスカッとしたのは事実、笑みを浮かべていたというのも事実。…出来れば私も加わりたかった。栄純らしい最後だったよ、お疲れさまと心の中で呟いた。

─‥
礼さんを見かけたのはやっぱり見間違えではなかった。

「礼さん!この試合観てました?」
「桜ちゃん!?あなたなんでここに?」
「ここ私の生まれ育った所です。」
「長野に住んでるのは知ってたけど、まさかこんな場所で会うなんて思わなかったわ。」
「それは私も同じですよ、あのなんでこんな田舎に?」
「スカウトよ。」

礼さんは時たまスカウトに行く。
礼さんとの出会いは、青道に行きお兄ちゃんは片岡監督と話をしていたので暇をもて余しているところに声をかけてくれたのだ。野球への情熱は監督と同様に半端じゃない、その姿に驚きを覚えたものだとあの頃を懐かしく思った。そう言えばお兄ちゃんを青道に入らせたがってたこともあったっけ。

「誰かいい選手いたんですか?」
「えぇ。」
「誰ですか? 礼さんの御眼鏡に適うなんて…、まさか栄太郎..?」
「えぇ。(栄太郎..だったかしら?)」
「え──!!!」

すごいな、栄純。
誰がエラーしようとも栄純は試合を放り投げることは絶対になかった。そういうところ本当に皆、勇気づけられてるって知ってんのかな?

青道の野球を見るまでは栄純やお兄ちゃんがやる野球が私の知る野球だった。

やっぱり栄純はいつでもかっこいい。

そんな栄純が青道…

うん、きっとかっこいい。

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