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▼ 迷い 2

「なんか唐突…。」
「うん、そうかも。」

私はお父さんと和解したことを若菜ちゃんに話していた、春休みの出来事のほとんども。

「東京の彼氏に毎日会いたくなっちゃたの?」
「いや、倉持さんは彼氏と言うかなんと言うか…」
「照れながら否定されても。」

話が逸れた…、何で倉持さんのことを出しちゃうのかな、もう。

「お父さんのことなの、理由は。」
「蒼一さんの?」
「うん、お父さんね、今仕事探してるのこっちの長野の方の。」
「へぇ…蒼一さんも随分子煩悩になったもんだね。」

子煩悩って言うか…親バカだよ、若菜ちゃん。
そう思って私は少し苦笑した。

「…直接は言われてないけど、多分私のため。でも、東京の方で誘われた野球に関われる仕事を私のために断ろうとしてる。」
「!!」
「私、確かに帰ってきてほしいって言ったけど…。おかしいよね、今は野球やってほしいって思ってる。」
「桜…」
「そこまで大切にしようとしてくれてる気持ちは分かる。だけど…なんか違う。」

家族を放っておいて野球をしてた人が子供のために、今までと全く違う仕事に変えようとしている。確かにいいことかもしれない、世間的には。

でも…子供のために野球から離れる?

今まで野球しかしてこなかったひとが何言っているんだろう。何だかお父さんが野球から離れてしまうなんて考えられないし、嫌だった。家族って親が子供を思いやるだけでいいの?

私だったら…

「だから東京か。」
「! 若菜ちゃん…」
「桜は小さい時からお互いを思いやり合ってきた環境だったから、その考えは仕方がないけど…。」

そう、それが普通なんだ。私にとって。

「あのね桜、無償の愛をくれるのは親なの。まだ今は親のしてくれることに感謝して送り返そうなんて思わずに、甘えてていいんじゃないの?…だって今まで桜はちゃんとしたものを蒼一さんからもらってるわけじゃないんだから。」
「でも…私は…」

そうしたい。と言葉がうまく続かなかった。
お父さんの事を考えるとやっぱりそうしたかった、でも若菜ちゃんの言葉が何よりも嬉しかったから。
そんな私の頭にぽんと手を置く若菜ちゃん。

「ゆっくり考えればいい、桜自身が出す答えなら私は何も言わないよ。」
「…じゃあ若菜ちゃん自身は?行って欲しくない?」

若菜ちゃんは寂しそうな顔をして穏やかに笑った。

「私は桜に東京になんか行ってほしくないよ。でも…そうやって自分のためじゃなくて、誰かのために何かを決断しようとする桜が大好きなんだよ、私は。だから…」
「…若菜ちゃん。」

花火はまだ時間的には半分くらいで、まだ春だから夜だとやっぱり肌寒くて、そんな中2人で座って眺める花火は悩む胸中とは裏腹に清々しいくらい綺麗だった。

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