▼ 想いの先
【倉持洋一視点】
麻日奈に呼び出され、俺はいつもの所へ向かった。
最初に会ったとき、あいつは責められてた。自業自得だ、あんなところで馬鹿騒ぎとまではいかないがそれ相応のことをやったんだ。そう思って見て見ぬふりをして、通りすぎようと思った自分もいた。でも、中学の頃の出来事が原因で"たかが野球"と思っていた俺が奮起することができたのは、小湊亮介さんをはじめとした青道のお陰、本当に救われたんだ。その2年の人達が、あいつを大切に思っている会話を聞いたから…、ここに来れなくなったらあの人達がどういう思いをするのかと思ったんだ。最初はそんな感じだった。
最近では勉強を教えている。
あいつは頭は悪くないが苦手な教科の英語と理科には屁理屈ばかり言いやがる。でも、不思議と面倒くさくは感じない。
勉強を教えたりして関わっていくうちに、あいつが本当に2年生が好きだって分かって、もしあの時俺が助けなかったらこの笑顔が見れなかったかもしれないって思ったら、なんだか愛しく思えて…
…何考えてんだ、ダメだろ。
「あっ、倉持さん!」
麻日奈は俺を見つけ嬉しそうだ。相変わらずよく笑うやつだ。
「何だよ、勉強なら呼び出さなくたって教えてやるよ。」
「あの、今日は違うんです…。」
「?」
麻日奈の顔が赤くなったのがわかった。その時、俺は嫌な予感しかしなかった。
「倉持さん、私…倉持さんの事が好きです。私と…お付き合い…してくれませんか?」
やっぱりそれか。答えなんて決まってるだろ。
「.......麻日奈、ごめん。」
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