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▼ 私達はこういう家族 2

どうして今更そんなことを言うのだろうか。

「言わないつもりだったんじゃないの?」
「お礼だ、今日来てくれた。」
「お兄ちゃんはこんなことくらいで自分の考えを曲げたりはしなかったよ。」

この人はお兄ちゃんと似ている。だから出た言葉だった。でもそれはこの人にとっては心外だったようだ。

「桜、これだけは忘れるな。俺はそうたじゃない、“お前の親父”だ。」
「…それが?」
「親ってもんはさ、子供が自分のために何かしてくれると本当に嬉しくって仕方がないんだ。娘が最後に来てくれたんだ、それに応えないでどうするんだ。」

私はこの人のためだけにに来たわけじゃなかった、たしかに最後の勇姿見ておこうとは思ったけど。自分のためでもあった。私だけ知らなくて仲間外れみたいになってたのが気にくわなかった、そんな子供のような思いがあった。でも、この人はそんな思いも全部含めて来てくれたことが、嬉しいって顔で笑っていた。

─‥
『そうたが亡くなった。』

桜がどんな気持ちで聞いてるかなんて、分かってるようで、俺はわかってなかった。

《なんで?》
『桜…』
《なんで貴方がっ…、それをいうの?》
『........』
《貴方は今まで私達に関わってこなかった!なのになんで...お兄ちゃんの最期を伝えるのが貴方なの!? 私達は貴方のせいでダメになった。私達はいつだって寂しかった。もっと一緒にいてほしかった…、なのに、なのにっ!!! なんでこんな今更っ...こんな..こんな最期にお兄ちゃんに関わったのが.......貴方なの?
グスッ いやだぁ、もうやだよ、なんで、なんで一緒にいてくれないの!?》

桜にかける言葉なんて、返す言葉なんて、俺には無かった。

ごめん…、ごめんな。桜。

本当はもっと早くに気づけたはずだった。こいつらの母さんの葬式の時に、明らかに様子のおかしいそうたを見たじゃないか。
何ができたんだ、俺は、そうた、お前が死ぬ前に何ができた?
でも、もう時を戻すことなんて出来ない。

だから桜、お前だけでも家族として親として側にいて守ってやりたい。

あのそうたの葬式の時、たくさんの後悔とそうたが亡くなった悲しみが胸を締め付けて散々泣いた。
人目を避けていたつもりなのに哲也には見られたんだよな。

「分かるか? どんなにお前が俺にとって大切な存在か、お前は俺にチャンスをくれた。まだやり直せるって思わせてくれた。本当にありがとう。」

桜は笑っているわけでもなく泣いているわけでもない表情をしていた。すっきりしたそんな言葉が一番合うのだろうか。そしてぽつりと呟いた。

「…これからなんだよね、私達家族は、もう随分と欠けちゃったけど。」
「そうだな。」

桜は少し走り前に出て、俺の顔を正面から見て希望の言葉をくれた。

「お腹空いちゃったし、早くいこうよ、…お父さん!」


初めて言ってくれたな…お父さんって。
走っていく桜をまた少し泣きそうになっているのを隠して俺は追いかけた。

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