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▼ やさしいひと 2

男の人達はどうやら私に用があるらしい、私を見て不機嫌にそうに顔を歪めている。そんな人達の顔をよく見れば知らない顔だった、たぶん新しく入った1年生だと思う。どうしたんだろう…。

「お前、練習中に騒いでた奴だろ。」

たしかにそうだと頷くと、彼等は私を更に睨みつけて私の前にやって来た。

「お前はここで野球をすることをどう思ってるか知らねぇけど、俺達は皆野球を真剣にやろうと思ってここに入ったんだ。なのに練習中に騒ぎやがって、邪魔だってことわかんねぇのか?」
「…」

声が出なかった。自分のしたことがどれだけの人に迷惑をかけたのか気づかされたから。
私は…皆に会いたくてここに来たのに、なんでそんなことにすら気がつかなかったんだろう…。

「おい、お前ら何やってんだよ。」

声がした方を見ると随分と目付きが悪い男の人が立っている。その人は私を見ると一瞬だけ驚いた表情をした。その一瞬に気がつかなかったのか彼等は普通に返答をした。

「こいつ、俺達の練習の邪魔するだろ? だからその事言ってやってんだよ。」
「あー、こいつがこの前いたやつか…。」

その人は何か考えてる様子で私を見る。
この人もやっぱり怒っているのだろう。さっきから随分と目付きが悪く見える。

「今日もいたけどな。」
「ヒャハハ! 確かにうるさかったな。けど、お前ら1人を相手に複数でごちゃごちゃ言うような陰険だから彼女できねーんだよ。」
「は!?」
「うるせーよ、お前だっていねーだろーが!」

不満げに反論する男の人達、そして私も急に何を言うのかと驚いていた。

「女泣かせるよーなやつに、彼女なんてできるわけねーだろ。」

そして急に変わった声色、それによってこの人は私を責めてるわけじゃないと分かった。でも、どうしてだろう?庇うことなんかないのに…100%悪いのはこっちなのに、なんで。

「え」
「あ…、わりぃ。」
「…」

私は別に泣いていたわけではなかったけど、戸惑ったような声で謝罪をする彼等。その態度から、忠告のつもりで泣かせるつもりはなかった事が分かる。やっぱり野球を真剣にやろうと思っている人達に、悪い人はいないんだ。なのに私はそんな人達に…。
彼等が去っていき暫くすると、誰かが戻ってきた。

「…あんまり落ち込むなよ。悪気があって言ったわけじゃねぇから、あいつら。」
「…ごめんなさい。」
「おい… お前、ホントに泣いてんのか?」

ずっと下を向いていた、と言うより顔が上げれなかった。

私…最低だ。

真剣にやっている人達を邪魔するようなことをして、人の気持ち全然考えてなかった。それだけは、絶対やっちゃいけないのに。 私がもし同じことをお兄ちゃんの目の前でやったら、絶対追い出されてた。あの人だってきっとそう思ってた。でも、私自身が気づかなきゃいけないことだから言わなかったんだ。

本当に調子に乗ってた。
最低最低最低最低最低最低最低最低…
本当に… 私は....

─‥

あ、帰らなきゃ。

どれくらいこうしてたんだろう?
顔をあげると、さっきの目付きの悪い人が、隣にいた。
ずっと私が顔をあげるまで隣にいてくれたの?

不思議に思って見ていたら、
「ほっとくわけにも…いかねーだろーが…。」
とそっぽを向いた。

やさしいひとに会いました。

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