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▼ やさしいひと 1

あの人と喧嘩はしてしまったけど、なんだか懐かしい感じがして少しだけ楽しかった。でも本人には言ってあげない。

そんなある日。

「桜、帰ろう。」
「うん。」

最近あの人は仕事で忙しいらしい。どんな仕事をしているのかは…未だに知らないけど。興味が無いと言ったら嘘にはなる。
そんなことを考えていたら、手に何も持っていないことに気がついた。

「あ、忘れた。」
「ん?何をだ??」
「本だよ、哲くん、私取りに行って来るから先に帰ってて。」
「大丈夫か?1人で。」
「大丈夫だよ。結構遅い時間だけど家からは近いじゃない、すぐ帰るからっ!」

そうして哲くんを先に帰らせ、私は忘れた本を取りに行った。

お兄ちゃんが野球をやっていたにもかかわらず、全然野球を知らなかった。だけど、哲くん達を応援しようとするなら、やっぱり野球は少しでも知っておいた方がいいんじゃないかなと貴子さんが言ってくれて、貴子さんお薦めの野球の本を読んで現在勉強中なのだ。結構苦戦してるけど…

あーあったあった、やっぱり置きっぱなしだった。
さて、哲くんが心配するし早く帰ろう…

「おい、お前。」

急に声をかけられ、振り向くと野球部らしき男の人達がいた。

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