▼ 親子喧嘩は他所でして 3
【伊佐敷純視点】
「おいおい、桜きてんじゃねーか、なんで皆声かけにいかねーんだよ。」
「純が一番声かけたくて仕方ないんだよね。」
「はぁ!? 別にそんなこと言ってねーだろっ!」
まあ、今すぐにでも抱きついてきてほしいとか、そういうの期待してたけど!
「ってあれ、何やってんだ…」
「喧嘩」
「…」
俺はそれを見て凍りついた。
そうしている内に哲がやって来た。
「おはよう。」
「あ、哲、おはよう。」
「やっぱり2人共来てるな、仲良くしてるみたいでよかった。」
「仲いいって言えるの、あれ。」
亮介を見ると苦笑いをしていた。確かに亮介の言う通りだよな。
でも哲は微笑する。
「いいんだ。桜にとって父親は今まで好きでも嫌いでもない、無に等しい存在だった。でもああやって蒼一さんが自分から歩み寄ってくれたお陰で話せてる。家族だとちゃんと認識してるんだ。」
「たしかに喧嘩は互いを認識しあってる証拠だよね。」
認識か…。桜は、あの時家族はもういないって言ってた。それを考えるとましになった方なのか。
それにしてもあれって…麻日奈蒼一だよな…、桜の父親だったのか…。
「…けど、あれは…」
「監督!何か言ってやってくださいよ、この大雑把人間に!!」
「大雑把人間とか面白いこと言うなー。ははっ、…片岡、絶対に味方するなよ。」
「…」
監督を間に挟んで喧嘩するなぁあ!!
見てるこっちが怖いだろうが!
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