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▼ 親子喧嘩は他所でして 1

なんであの話の内容から、なんで私がこっちに来ることになるの!?
その時私は物凄く怒りながら結城家の食卓でご飯をごちそうになっていた。

「桜、そんな顔して美味しくないのか?」

哲くん、何をふっとぼけたこといってるの。そんなの決まってるじゃない。私は口許が緩み、笑顔で言った。

「スッゴく美味しい!!」
「桜ちゃんはいつも美味しそうに食べてくれるから作りがいがあるわぁ。うちの息子2人は無愛想だから。ふふ。」
「…」「…」

只今春休みの真最中。
栄純達は部活動だろうから私は東京へ行くつもりだったので、そこは当初の予定通り。
でも、あの一本の電話で私は大好きな皆のところへ行く気が根こそぎ取られてしまった。


『はい麻日奈です。』
《桜か?》

久しぶりに聞くあの人の声。うかがうように聞くその声は私を忘れたとかそう言うことではないのは分かるけど、何だかその声は少し軽く感じた。

『電話するって言うから出てやったんでしょ、なによその軽いノリ。』

苛っとして、喧嘩口調で出てしまった。

《…遅くなってすまない。》
『遅いにもほどがあるよ、あれから1ヶ月以上過ぎてる。』
《すまない。》

謝られてるよ、まずいまずい。電話越しだから上手くなんか言わなきゃ…別にそこまで怒ってない。電話してくれたんだから。

《お前にそうたのことを伝えた時のお前の言葉で、お前らになにもしてやれてなかったって事に今さら気付いた。 大切なものっていうのは無くしたときに初めて気がつくんだな。》
『!』

その言葉。

遅いよ…遅すぎる。今更だ。私に言うだけじゃ意味がない、お兄ちゃんがいなきゃ。一番その言葉を聞きたかったかもしれない、お兄ちゃんがいなきゃ…

『ふざけないで!!』

結局、私はキレていた。

『それに私、覚えてないから。貴方に大切なことを気づかせた言葉を。忘れちゃったから。』
《そうなのか?》
『そう!』
《それは困るなぁ。》
『は?』

困る?何が困るの??
私の返答にあの人は今までにない真剣な声色で答えた。

《あの言葉はお前にとって、そしてそうた、それとお前の母親の言葉を代弁した言葉だ。お前も俺も覚えていなきゃいけないんだ。》
『…じゃあ、貴方が教えてくれればいいじゃない。』
《俺が言った言葉をお前が言った言葉として記憶されても…》
『されても?』
《俺が嫌だ。》
『は?』

《あれはお前の言葉だ。嘘偽りなき、俺がいいと感じた。》

やめてよ…貴方のそういうところはお兄ちゃんと同じなんだよ。

電話越しだったけどあの人に気づかれないように泣くの大変だった。お兄ちゃんの面影があの人にもあったってことが、嬉しかったのか悲しかったのか、なんか泣けた。

『…』
《ってことで、東京来いよ春休み。泊まるところは結城さん家でいいから。じゃっ!》

ガチャっと電話が切れた。

『え』

つい、今まで話していた受話器を見る。
そしてまた耳に当てると、うん。やっぱり切れてる。

はぁぁぁぁあ!?
何でそんな勝手に…ちょっ…はぁぁぁぁあ!?

あの人、お兄ちゃんと大雑把なところも一緒なの!?

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