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▼ 伊佐敷純奮闘物語

あいつに、俺自身にムカついて、あいつのところへ走ってた。

哲から話を聞いて…
今までそんな大事なことを言わなかった、隠して泣いたりしながらも俺達のことを応援してくれた、悲しそうな顔しながら…それでも笑うあいつが…

そんなあいつがいつのまにか…

好きになってた。

─‥
『泣き虫』

その時亮介は一瞬だけこっちを向いて笑っていたのを確かに見た。
あいつ絶対俺がいることわかってやがる!

『りょ! りょうす…ケェ』

叫ぼうと思い前に出ようとした俺は後ろから口を塞がれた。

『待て、伊佐敷』
『やっとあいつの気持ちが聞けるんだ』
『邪魔はするな』
『うがっ!』
『ウルセーッ!』

ブンッと振り切り振り返ると皆が居た。哲のやろー皆をわざわざ呼んできやがったのか。

『口塞ぎやがって息できねーだろーが!』
『お前が喋ると五月蝿いからな』
『あぁ? クリス…てめぇ、って言うかなんでここにお前らも…、』

あいつらは桜達の会話を俺の話しを無視して聞いている。

『てめぇらなぁ、…。』

そして俺も奴等の後ろへ。

『なんだ 純も聞くのか』
『うるせーよ』
『あいつ、あんな事思ってたんだな。それでも俺らを…』
『俺達と一緒に頑張ってたんじゃねーか』

泣いている桜を見て、どうしようもなく愛しくみえた。その時、不思議と怒りは消えていた。

独りじゃねーよ、お前は。

『また泣いて』
『 だって、亮さんがそんなこと言うから! 』
『皆もなんか言ったら?』

ちくしょう。亮介のやつ…

『やっぱり気づいてたのかよ』
『皆で盗み聞きなんて趣味悪いなー』
『え!?』

ちくしょう。

『亮介だけおいしいとこもっていきやがって』
『そうだな』

『『『『桜!! いつだって来いよ!』』』』
『…!! 皆…っ。ありがとう』

初めてくもりなく笑う桜を見た俺は
ついみとれて、俺の気持ちを伝えるのを忘れた。

─‥
桜が長野に帰ることになった。

『そろそろ帰らないと出席日数的なものが…学校がぁあ!!』
『落ち着け』
『帰る準備しましょうか、桜ちゃん』
となったらしい。
俺達に事実を打ち明けてから直ぐの事だった。

『明日、桜が帰るからな』と哲が言ったんだ。

『少し静かになるな』
『まぁ、またいつかこっち来るよ』
『うがっ!』
『増子ぉ! お前いい加減喋ろよ!!!!』

ははははははは…って一緒にこいつらと呑気に喋ってる場合じゃねー!

「…」
「?」

ってことで今にいたる
桜に皆に挨拶に行く前に話があると俺は呼びつけた。こうして呼びつけておいてからもう20分くらいたった。
やべぇ…………
こんなふうになるんだったらもっとマンガとか読んどきゃよかった。
ちくしょう。

「純さん?」
「!! …なっ、なんだよ」
「変な汗でてるよ」
「これはっ、暑いからだ」
「今日結構肌寒いよ」
「…」

もう自分の言ってることがわかんねぇよ!マジでやべぇ。喋る言葉を懸命に探していると桜は自分の腕時計を見た。

「そろそろ皆のとこいく?」

え、待てよ桜。

「桜っ!!!!」

「純さん?」
「俺、お前が本当にいい顔で笑えてよかったって思った。
お前もここで俺達と頑張ってた事が分かったとき、どうしてお前が言わねーんだとか思ったけどよ。でもそんなごちゃごちゃ考える前に一番最初に思ったことは、それなんだ」

そうだ。ただお前が笑えてよかった。それだけだ。
急にそんなことを言ってしまった俺に桜は少し驚いたように見えたけど、静かに笑うと本当のことを話してくれた。

「純さん…私ね、皆に甘えてたの。長野に帰って突きつけられる現実が怖くて、此処があまりに居心地がいいから。
でも皆が、私は独りじゃないと教えてくれた。家族はお兄ちゃんだけじゃないって教えてくれた。そして私に本当の笑顔を取り戻させてくれた。嬉しかったよ。
だから、甘えただけの自分からは卒業しようと思ってさ。ここでもらったものを糧にしてね」

桜は俺に近づき手をとると笑った。

「純さんがあの時声をかけてくれたから今がある、本当に嬉しかったよ。ありがと、純さん」

よしっ言える。この感じなら…

「俺…おっお前のこと…ガッ」

ドスッと頭にチョップが入った。しかもかなり痛いやつで。あまりの痛さに頭を抱え振り返る。

「ハエがついてたよ」
「なかなか来なかったからな、皆を呼んできたぞ」
「亮介ぇぇ! てめぇら!!!」
どつきやがって、俺がせっかくせっかく…ちくしょう。

「? 桜?? さっきからどうしたの?」

その言葉に桜を見ると、何故か突進してきた。

「純さん!!! 皆!!大好きぃぃい!!!!!」

━━こうして俺の告白は亮介達により阻止され、
大失敗に終わった。
何回か俺は桜に告白を試みることにこれからなっていくのだか…この分だととうぶん先になりそうだ。
でもこの時よかったことがひとつできた。
それは桜が俺に大好きと言って抱きつくようになったことだ。

続くぞ オラァァ!!

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