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▼ そこでみたもの 2

青道に行くと片岡監督が私に気づき声をかけてくれた。お兄ちゃんのお葬式にも来ていたから私の様子を知っていて、だからなのかは分からないけれど学校に行っていないことには触れずにいつでも来いと励ましてくれた。

毎日毎日見に行った。
まるで何かの影を追い求めるみたいに。
そして今日もいつものように座っていたら、顔の怖い人が近づいてきた。
なんか怒ってるみたい…かなり。きっと私に用があるわけじゃないだろうなと思っていた。

「おいっ!」

急に話しかけられて正直驚いた。けど、黙ってよう。なんか怖いし、ほんとに顔が。

「…」
「…」

「……」
「………」
話し掛けて来たのに何で黙ってるのかな、なんか怒ってるのかな?
よし、聞いてみよう。頑張るんだ、私。

「…怒ってるんですか?」

「はぁ!?」
「だって…なんか…」

つい目を逸らしてしまうと、

「なんかなんだよ!?」

苛ついたのか大きな声で聞かれた。こういう時は早く言ってしまおう。

「…顔が…怒ってる…」

「おいっ! 桜っ!!」
「結城!」

自分がまずいことを言ったと思った瞬間、間に割って入ったのは慌てた様子の哲くんだった。

「どうしたの、哲くん」

「哲くん!?」

「伊佐敷!カツアゲはよくないぞ」

真顔でそんなことを言う哲くんにポカンとしてしまった怒っている顔した男の人。私も哲くんはいったい何を勘違いしたのだろうと思ってしまった。

━━━数分後

「なんだ、そういうことか」
「相変わらず哲くんは面白いね、ふふっ」
「ふふじゃねーよ」

どうやらこの人は元々この顔らしい。
私が笑っていたとこ見てちょっと不満そうに見える。それも含め面白いなこの2人。
あれ、私少し笑えたかも…。
何で練習を見ているのか聞かれると思ったんだけど、私が何か別のこと考えているのかと思ったのかは分からないけれどその人は少し怪訝な顔をしてた。

すると大きな声がした。
「おい!! 伊佐敷!結城!いつまで喋ってんだ 早く来い!!!」
「やべっ」
「桜、またあとで」
「うん! 頑張って来てね」
「! あぁ!!」
哲くんは驚いてた。頑張って欲しい、これは嘘じゃないよ。

部活後、私達は話をしていた。

「久しぶりに笑ってたな」
そう言う哲くんは少しだけ嬉しそうだ。
「そうかな?」
「無理してる感じには見えなかった。ほんの少し前の方がもっと笑えてたのにな…」
「私、もう笑うこと出来ないかもって思ってたんだよ」

つい苦笑をすると哲くんは悲しそうで…、でも押し隠しているように見えた。

「頑張ったな」
「私は何もしてないよ、哲くん達が頑張ってるのを見て…、お兄ちゃんだってこうだったんだって思い出せたの。ただ直向きに、本当に真っ直ぐに…。こんなところでまたそれを見れた…」

結局追い求めてしまうんだ影を…、お兄ちゃんの。

でも、私はその時違う気持ちも確かにあった。

練習をしている哲くん達を、そこで見て、そこでもらったものは…

ほんの小さな勇気だった。

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