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▼ 一歩だけ 1

引きこもってから1週間たった。
引きこもり先は結城家。お兄ちゃんが高校に通うためにいた場所。

おじいちゃんとおばあちゃんと長野に帰る気にはどうしてもなれなかった。
お兄ちゃんがこの前まで生きていた、それを感じられるのは東京だから。
あの人のところにいくしかないのかなってウロウロしてたら、
『家に来る?』
と哲くんのお母さんが声をかけてくれた。

『いいんですか?』
『蒼一さんがきっと桜は帰りたくないだろうからって、さっき頼みに来たの』

あの人が、そんなことを…。
私がどう接したらいいか分からなくなってること、薄々感づいてるのかな?
それよりも、ちゃんと分かってるじゃん。私のこと。

『桜ちゃん、来る?』
『あ、じゃあお言葉に甘えます』
そして結城家に行き、お兄ちゃんの部屋に入った。
大雑把な性格通り雑な部屋で少し笑った。

『お兄ちゃん…もう....帰ってこないんだ』

また涙が出て目を擦ると少し痛かった。

お母さんが亡くなった時はもちろん悲しかったけど、ここまで苦しくなかった。
お兄ちゃんはあの時、今の私より苦しかったと思う。楽しかった思い出だってあったはずなのに、その時の事が嘘みたいに酷いことをされて、頼ろうにも頼りたくないあの人がいて、妹がいて。

苦しくないわけないのに、
“桜、大丈夫だからな、大丈夫だから。”

そう言っていたお兄ちゃんは…、強い人だったんだ。

強くて真っ直ぐでいいお兄ちゃんだったよ。

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