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▼ そんな私は…

私の父は昔、青道高校で野球をやっていたらしい。あの強面で有名な片岡監督が父に球を受けてほしくて入ったほどの捕手だったらしい。
まぁ、実際は父の方が片岡監督が入る前に卒業しちゃったらしいけどねー。
ん? さっきから らしい らしいって言ってる…??
だってさ、しょうがないんだよ。
あの人は私達家族のこと放っておいて、東京で現在進行形で野球関係の仕事について働いているんだから。
どんなことしてるかなんて詳しくは知らない。

あの人のせいでお母さんはいつも苛々して、寂しさを紛らわすかのようにお兄ちゃんと私に暴力を振るうようになったらしい。

そう、これも“らしい”。

お兄ちゃんから聞いた話。

お母さんは私が小学校にいく前に亡くなってるし、あんまり覚えてないの。
お兄ちゃんはあの人のこと嫌っていて、私は嫌いとか好きとか言う前に、私の記憶の中にあの人はあまり存在していなくて、分からなかった。
ちゃんとした話したことさえあったかなかったか分からないくらいだから。

それに、話したこともない人を勝手に聞いただけの想像で判断するのはいけないと思う、という考えも私の中にはあったし、好きも嫌いも無かった。

ただ、お兄ちゃん そうた は嫌いと言っていた。

そんなお兄ちゃんの影響もあって、なんとなく今は、あの人 父 蒼一 のことをあまり好きではないのかなと思う。
そんな理由で、家族はお兄ちゃんと私しかいないと思っていた事があったんだ。私は。

お母さんが亡くなった後、小学校に上がる前、おじいちゃんとおばあちゃんに引き取られて熟年夫婦のラブラブ度に二人して呆れながらの毎日。

楽しかったよ。

心臓が少し弱かったお兄ちゃんと、人前では何故か大人しくなってしまう性格だった私。
そんな私達を温かく見守りながら育ててくれた。


時は流れ私 桜 は中学二年生になっていた。


ある日、お兄ちゃんは亡くなった。


今となって気になることと言えば、お兄ちゃん、何であの人に教わっていたって言ってた野球…

続けてたんだろう?


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