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「ただいま〜…」
学校が終わって自宅に着き、玄関の戸を開ける。
いつものように美鶴ちゃんの笑顔がお出迎えかと思っていたら、今日は違った。
「やっと帰って来たな、珠紀!俺様を待たせるとはいい度胸してんじゃねぇか」
…騒々しい声が頭にダイレクトに響いた。
数回、目をぱちぱちさせる。
廊下の奥からやってきたのは、私の1つ上の先輩。兼、彼氏の真弘先輩である。
いきなりの"俺様"登場に面食らってしまった。
「…ま、真弘先輩。なんでうちにいるんですか!」
「おう、邪魔してるぞ」と意気揚々と手を軽く挙げてニッコリする先輩。
まぁ今更我が家に勝手に上がり込んでいても、別に変な事ではないのだが。
「なんでいるって、決まってんだろー?今日はお前をデートに誘いに来た」
……はい?
「えーっと…はい?」
「なんだよ無反応かよ。"デート"だよ"で・ぇ・と"!」
「デートって…急ですね」
「「急ですねー」じゃねぇだろ?もっとこう…嬉しいとかないのか?」
「いや、違いますよ。急に嬉しくて反応出来ないといいますか…」
段々顔が熱くなってくる。
しかし先輩は照れることなく、真っすぐに私を見てこう言った。
「そっか。…おかえり、珠紀」
その言葉で、私はますます顔が赤くなるのだった。
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