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これは、まだ寒さの残る冬の日のお話し。







「珠紀、雪合戦とはどういうものなのだ?」


突然アリアがそんなことを言った。


「雪合戦?どういうって…雪玉を作って、それを投げ合う遊び、かな」


アリアの質問の意図がわからず、とりあえず雪合戦の説明をしてみた。


「ふむ…それは楽しいのか?」


想像してみたのか、少し怪訝な表情でアリアは言った。

「まぁ…楽しいんじゃないかな?日本の子供たちの間では、雪が降ったら雪合戦は当たり前のようにやってると思うし…」


そういえば、大きくなってからはやってないなぁなんて言いながら考える。


「日本の」という言葉も響いたのか、アリアは興味深そうにほう、と呟いた。


「ならば、せっかく雪が積もっているのだ。私も体験してみたい」


素直に「やりたい」というのが恥ずかしいのか、アリアは日本の文化を学ぶためだ、と付け加えてそっぽを向く。

子供さながらの好奇心を見せるアリアに私も嬉しくなり快く返事をする。


「そっか。じゃあやろう!」


そう言ってこたつから立ち上がろうとする私達に「おい」と声をかけたのは、今までずっとだんまりしていたこの先輩。
足の先から首まですっぽりこたつに入り込んで、いかにも寒そうだ。


「何ですか先輩?」


私はそんな格好のちょっと間抜けな先輩に尋ねてみる。


「お前ら二人だけで雪合戦するつもりか?」

「二人では出来ない遊びなのかっ?」


先輩に言われて、あぁ言われてみれば…と思ったと共に、アリアの焦ったような声が聞こえた。


「まぁ出来なくは無いけど、やっぱり多いほうが盛り上がるかなー」


と私が言うと、そうか…とアリアは複雑そうな顔をした。

真弘先輩はやっぱり考えてなかったな、という呆れた顔をしていて、私はこの後どうしようかと頭を捻った。


するとふいに真弘先輩が口を開く。


「あー…。外は寒いから中でトランプでもしようぜ」


そう言って潜り込んでいたこたつから抜け出て、我が家の様にトランプの在り処を見つけ出す先輩。


「ほい」


それを手渡されて、私はアリアを見るけど彼女はまだしょぼくれている。


よっぽど雪合戦したかったんだなぁ…。


渡されたトランプを見て、真弘先輩には悪いけど今はアリアの気持ちを優先したい。


「ねぇアリア。雪合戦しようか」

「ぇ?」


もう出来ないと思っていたのだろう、驚いた顔をしている。


「でも、二人では無理だと…」

「大丈夫だよ。ほら、ここに暇そうな子供がもう一人いるし」

「誰が子供だ。俺はもう立派な大人…」

ぎゃーぎゃーいう真弘先輩の発言を無視して、行こう?とアリアに笑いかける。


「う、うむ!」


するとアリアも笑って、私達は防寒対策に取り掛かる。



「おい!俺はまだ行くって言ってねぇぞ!つーか外は寒いって…」

「「却下」する」


尚も反論する先輩に、私達はいつかの祐一先輩よろしく反論を辞さない声で言った。



瞬時、先輩は青い顔をしたが渋々上着に手をかけた。



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