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「よし、じゃあ行くぞ!鞄置いて外行け外」



そう言ってどんどん私を戸の外へ追いやる。



「ちょっと先輩!…どこ行くんですか?」



ホントに急だなぁと思って、それでもやっぱり嬉しいから内心ワクワクしながら先輩に尋ねてみる。


すると、先輩の答えにそのワクワクはすっきり消滅してしまった。




「境内だ」



………。





「はぃい!?なんでデートでうちの境内に行くんですか!?」


「あー、まぁ怒るとは思ってたけどそう怒るなって!あれだ。"お家デート"ってやつだ」



いやいやなんか期待してた分ショックが。

そりゃこの季封村に若者のデートスポットなんてないけどさ!




「ほらお参りすんぞ?今日くらいは、良いことありますようにって祈っとけって」


「へ?なんでですか?」





今日くらいは、という先輩の言葉に思わず聞き返してしまう。





「あ?なんでって…もしかしてお前、今日が自分の誕生日だって忘れてんのか!?」





そう、今日は6月28日。
私の誕生日だ。





「いやいやいや!自分の誕生日を忘れる訳無いじゃないですか!ただ…」


「ただ?」


「先輩は私の誕生日、覚えてないと思ってたので…」





凄くあきれた顔をされた。



「お前なー…。俺がお前の誕生日を忘れる訳ないだろ?……彼女なんだから」




先輩はそっぽを向いてそう言った。




嬉しくなった私は勢いよく先輩の両手を取った。



「うぉ!?」


「先輩、今日で私も18歳ですよ!ちょっとの間、先輩と同い年です!」


「…ったく、そんなことが嬉しいのかよ」


「そんなことじゃないです!先輩に追い付いたのが嬉しいんです」














ずっとずっと、先輩は私の前ばかり歩いていたから。



進んで戦いに行って、私を守って、傷ついて。



いつか、私を置いて行ってしまうんじゃないかって、怖かった。










「…珠紀」



名前を呼ばれて振り向くと、先輩が真剣な表情をしていた。


私の考えてることがわかったのだろうか。




そして、ふと笑う。




「珠紀。お前はいつだって、俺の隣にいてくれた。お前が隣で、そばで笑っててくれればそれだけでいい。…だろ?」











先輩のその言葉に救われていく気がする。




私には戦う力がなかったから。


私には皆が傷ついていく姿を見ていることしか出来なかったから。



ずっと一緒に戦いたいと、力になりたいと思っていた。










「…はい」



「それにもう悲劇は終わったんだ。これからはお前の先を行ったりしないから」



先輩は少し苦笑しながら言う。



「そうですよ。…これからは、ゆっくり隣を歩かせてくださいね?」


「わかったよ。お前こそ、俺の先行くんじゃねぇぞ?」











これからはずっと一緒に歩いて行こう。













「珠紀」



「はい?」



「誕生日おめでとう」



「…ありがとうございます」



「…俺と出会ってくれて、ありがとう」



「…はい」








「生まれて来てくれて、ありがとう」






「……先輩も













私と出会ってくれてありがとう










生きててくれてありがとう。















この言葉は、先輩の誕生日にお返ししますね。










「ありがとう」を君に

2013.6.28



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