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少し行った所で、空を見上げる彼の姿を見付けた。




なんともなく元気そうにしているその人を認めると、ホッと息をついた。




「はじめさん」




静かに声をかけると、彼はゆっくりと振り向いた。




「…ただいま、千鶴」




そして優しい声音と表情で、私の名を呼んでくれた。



「どうしたんですか?こんな所で…」




持ってきた羽織りを一さんの肩に掛けると、ありがとう、と笑みを返してくれた。

私は先程まで一さんが見ていた方向を見上げるけれど、そこには空が広がるだけで、特にめぼしい物は見付けられなかった。




「?」




首を傾げてみると、一さんは微笑みながら言った。




「いや、何かを見ていた訳ではない。考え事をしていた」



「…考え事、ですか?」





その優しい表情を見ながら、私は尋ねる。





「幸せ、とは目に見えるものなのだな」




一さんは、本当にしあわせそうに、そう呟いた。





「この地に2人で住む様になってから、俺は心が常に幸せに満ちている様に感じる。朝起きて一緒に朝飯をとり、家に帰るとお前が笑って迎えてくれる。毎日お前と過ごせることが、俺にはとても贅沢なことだ…」




一さんは、少し頬を赤くしながら話してくれる。
でも、それを聞く私はもっと顔が赤いのだろう。





「俺にとっての幸せの形は、千鶴、お前そのものだ」






そんな風に目を見て告げられれば、私はますます赤くなるしかない。







「…私も、一さんといれば幸せです。一さんが、私の幸せです」











彼が幸せならば、私も幸せ。



彼がいれば、私はどこでだって生きていけるだろう。










「……今夜も冷えます。そろそろ帰りましょう」





私は幸福な気持ちで、一さんに声をかける。





「ああ…」






一さんはそう答えてから、すっと私に右手を差し出した。





「今夜は冷える…。繋いで帰ろう」





「…はい!」












私達は真っ白な道を2人で歩きだした。














雪、寒空

2012.9.25



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