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「アハハ、まだ小姓の癖が抜けないの?」
彼は面白そうに言う。
「仕方ないじゃないですか!総司さんがあんな事言うからですよ」
私は少し頬を膨らませて、彼を睨んでみた。
…きっと怖くなんかないんだろうけど。
「ごめんごめん。中々起きそうにない君を起こす方法を考えてたら、これ、すっごく面白そうだったから」
「…はぁ。心臓に悪いです」
私はこれから寝起きが悪い度、この起こし方を実行されるのだろうか…。
今から気が重いです。
「…ところで、私に御用でしたよね?」
「うん。気持ち良さそうに眠ってる君を眺めるのも良いけど、そろそろお腹が空いたかなーと思って」
総司さんの言葉に気付けば、もう昼時。
「あ、そうですよね!すぐ準備しますから…」
慌てて立ち上がる私の手を、彼の手が掴んだ。
そして彼も立ち上がり、そのまま私の手を引いて歩き出す。
「総司さん…?」
声をかけてみると、彼は微笑みながら振り返り言った。
「僕も一緒に作るよ。お昼ご飯。昔、皆で当番してたみたいにね」
皆で食事の用意をしたこと。
懐かしい新選組時代の光景を思い出して、思わず笑みがこぼれる。
「楽しい思い出だってあるでしょ?」
「はい。楽しい思い出ばかりです」
そんなことを言いながら、私たちは短い帰路を歩いた。
今は皆別々の場所にいるけれど、きっとそれぞれが幸せになっていることを、私は願う。
どうか、これからも楽しい日々を皆が過ごせますように…。
「お昼が終わったら、またあそこで眠ろうか」
「食事をしてすぐ横になるのは体に悪いですよ」
「千鶴ちゃんは過保護だなぁ…。まるで誰かさんみたい」
総司さんの隣で笑いながら、私は今日も幸せな眠りにつく。
永遠の花の眠りに幸あれ。
花の眠り
2012.10.8
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