最高の友人

ベールは花嫁を悪霊や悪魔から守るためらしいが、花嫁自身が自ら悪魔たちに突っ込んでしまえば意味がない。
身に付ける花嫁が悪霊など怖がりもしないのだから、あまり意味のないようなものだ。
王候貴族の花嫁衣装を自分が着ることになるとは予定外だったのだろう。鏡と睨みあいをしていた。
パーティーでの振る舞い方、洋食や中華のテーブルマナーなど様々なことをこなしてきたため、当然結婚式のマナーぐらい思い出すのは朝飯前だ。
自分が花嫁だった場合はやったことはないのだが。
口から漏れた帝国公用語。肉体的ではなく、精神的に疲れが出ているらしい。
出てきた言葉に全く気がついていない。

「一応授業に帝国公用語はありましたが、今のはちょっと・・・・・・」

控え室を訪ねに来たフレデリカに早くから注意を受けた。
「結婚生活で一番大切なのは忍耐である」と。
これは過去に地球のチェーホフの言葉らしいが、彼がどこにいてどんな人生だったかは関係ない過去だ。
彼女が何に忍耐を向け、何に懺悔するかは今ではまだわからない話ではないか。
まだグローブ(手袋)をせずに、右手にした腕時計をいじる女帝。
左利きではない彼女が、右手に腕時計をするとは珍しい。

「そろそろ腕時計をはずしましょう。
でも右手になさるんですね」
「あぁ、癖なんだ。
こいつにはちょっと仕掛けがあってな、こうすると毒針が」
「はずしましょうね」

腕時計をいじり出すより先に腕時計に手を出したフレデリカ。
毒針など実践されたくない話だ。
仕掛け腕時計をして自分に刺さらないのか、フレデリカは疑問を感じたが聞かなかった。
余計なことを楽しんで答えそうだったので。
ちなみに自分に刺さって死ぬ工作員は年に一人はいるらしい。

「フレデリカ、定期的に会いに来い。
帝国の連中になんか言われたら、女友達はよくお茶するもんだってな」
「うふふ。私を女友達として見てくださっていたのですね」

カーチャルは真っ赤になって目をそらした。
余計なことを言うものではないな。
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