女帝の昇進
国防委員長からさしむけられた地上車になり、委員会ビルに向かう。
査問会ではないと眺めは良いものだな、女帝は眠そうな目でそう感じた。
今回は賓客として迎えられた。元帥に対する同行者は三名。フレデリカ、シェーンコップ、カーチャルだ。
ここでいい顔をするから、戦争に負けたら戦争犯罪人になれと言う意図か。そんなネガティブな考えに行きがちな女帝は、国防委員長が待ち受けるビルに入る。期待の混じる視線に目を向けず、委員長室に迎え入れられた。
そこで見たアイランズ委員長の変貌には驚かされた。
「化けの皮が剥がれたのか?」
化けの皮というよりもすがるものがなくなり、完全に気力を無くしたように見えた。
このまま気力を無くし続けたままなら、査問会など馬鹿な考えに至らずどんなに楽か。
そう長くはもたないだろう。気力をなくしすぎるか、戦争に勝って復帰するか二択だ。
女帝は部屋の隅であくまで護衛役として存在していた。どんな会話をしていようが、正直に興味がなかった。
勝つ約束が出来るわけでもないし、気力付けしてやろうと思うわけでもない。
「まぁこんなものかな」
退室したヤンはそう呟いてから、考え込んでしまう。
首を振り女帝も何やら言いたげだった。愛国心など振る旗のデザインが違うだけなのは同感だが、そのデザインの中身が重要視されるべきなのだ。
しかし、その先はジャーナリストたちに遮られた。
カーチャルの次にシェーンコップがブラスターを抜いた。ジャーナリストが押し掛けてきたら警戒しないわけがない。
そのジャーナリストたちは用意していたような質問を叩きつけた。
「・・・・・・かならず勝って市民の期待にこたえる、と。約束してください・・・・・・」
約束して勝つならいくらでも約束してやるさ。
ヤンの心情はそんなところだろう。そんなヤンより明らかな大人である、フレデリカの瞳は非礼な客を退けるには充分だった。