彼ら箱舟隊

三万人の女性と六百もの赤ん坊が軍艦に乗せる話を聞いた女帝は、笑いで手にある爆弾を落とすところだった。
一刻一刻と変わる数値にキャゼルヌは頭を悩ませていただけに、仕方がないだろう。しかも、アッテンボローが立てた提案で輸送艦をいくつも壊されていたのだから。
キャゼルヌの説教からうまく逃げたアッテンボローに、ヤンは頭をかいた。
女帝はうまく爆弾を設置してから、自分も脱出するために最低限の荷物を持たねばと考えた。
しかし、特に手にするものがなかった彼女は、そのまま軍艦に乗り込むしかなかった。

「箱舟作戦?ネーミングセンスに欠けるな」

ポプランに作戦ネームを伝えられ、そう言った。
作戦を練っている時間と動力ゆえに、そんな欠けたネームになったわけだ。
名前が良いから作戦が成功する訳ではないが、一応兵士の士気に関わるのだがな。
ヤンが嫌がったぐらいで、他に目立ったことはなかった。
イゼルローンを手離すという歴史的にも戦略的にも驚くべき事態に、フレデリカは女帝に会いに向かった。

「イゼルローンから離れるのは悲しいのでは?
確か身内がここにいらっしゃったことがあったのでは?」
「ふん。あんなものは身内とはいわん。
帝国に渡しておけば、イゼルローンの不備を帝国が直してくれて、ちょっとばかり利子がつくかもしれん。
義眼の修理の時間がほしいのが本音だが」

あまりイゼルローンを放棄するのを目で見たくないようだ。
イゼルローンの方角に頭を下げて消えてしまった。
|
- 30//61 -
×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -