彼ら箱舟隊

「イゼルローン要塞を放棄する」

これは誰しもに衝撃を与えた発言であった。
一人だけ、席に座らず立って話を聞く女帝のみがただ無表情な顔を向けていた。
フェザーン回廊が帝国の手に落ちて、イゼルローン要塞の存在価値は落ちた。
この場にいては同盟のハイネセンが先に帝国の手に渡り、イゼルローン要塞のみが孤立する。
ヤンが軍人としてレンネンカンプのような思考なら、イゼルローンを放棄せずに軍人としての威厳を保つだろう。
あくまでレンネンカンプのような軍人なら。
単にイゼルローン要塞を返すだけでは面白味に欠ける。当然置き土産を用意してやらねばならん。
会議が終わり、シェーンコップがヤンにあまりよろしくない事を言う。
確かにこの場に留まればヤンがいる難攻不落のイゼルローン要塞に、同盟のお偉いさんがやって来て泣きつくことだってある。
そうすればヤンの政治的地位が高くなる。しかし、それをよくいわないだろう。

「とりあえずカーチャルにはやってほしいことがある。
真の罠のために爆弾を仕掛けたいんだが、どこがいいかな」
「・・・・・・はぁ」

爆弾置き場ならいくつか心当たりがある。
しかし、見つかりづらく見つかるように置くにはちょっとばかり難しい。
爆発処理班がはじめに乗り込むだろう。なら要塞の重要部を見るのが早いだろう。そこの中で見つかりづらい場所に置くしかない。
カーチャルはつまらなさそうに笑った。
|
- 29//61 -
×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -