未練と足枷

ヨーゼフ2世が同盟に来たのが、先日のように感じられた。
ユリアンがフェザーンに行く事態があったのだから、遠い昔のように感じてのいいはずだった。
おそらく、ラインハルト・フォン・ローエングラムの宣戦布告なせいだろう。
ヨーゼフ2世を誘拐した悪き敵自称自由惑星同盟を倒すためだろう。我々は格好の的でしかなかった。
しかも帝国はこの作戦を「神々の黄昏」と名付けていた。自分たちを絶対の正義と言いたいのだろうか。ラインハルトの意図はそんなものなのだろうか。
ただ兵士の活気づけなのか。ラインハルト自身にも解らないだろう。
キルヒアイスに贈るプレゼントであるかもしれない。
そんなプレゼントに巻き込まれようとする人々は多くいた。この中の何人が生き残り、歴史を目の当たりにするのか。女帝のその中にいた。
薔薇の騎士連隊「トリスタン」の中に。
本来ヤンの傍にいるべき彼女はシェーンコップに、明らかな我儘を言っていた。
ロイエンタールが自ら侵入するだろうから自分にぶつけろ、と。
当然だがYESといえるシェーンコップではない。彼女は強いがそこ以前に問題がある

「駄目だ。俺が許すと思ったか」

フレデリカという障害よりシェーンコップという障害の方が大きかった。
女帝だろうと男女差には勝てるわけがない。例えば女帝のほうが身軽でも。
シェーンコップは睨むより呆れ返っていた。

「ヤン提督に怒られるから連れていかん」
「護衛として虫はあらかじめ排除しておくべきだが。しかもロイエンタールじゃないか」
「ヤン提督の心の拠り所がなくなるから却下だ。お前は自分の立場を理解しているか。護衛は虫には近づかず、近づく虫を駆除するんだ。」

シェーンコップはまたしても呆れ返っていた目で見てきた。護衛の役割を忘れたわけではない女帝には耳がいたい。シェーンコップはけしてフレデリカのように黙ったままにする人ではなかった。
通りすがりのポプランに女帝を押し付けてしまうと、その場から去ってしまう。
本来ポプランはここにはいないはずだ。我儘な女帝を連れ戻しにわざわざ来ていたのだ。

「おっと、美人が腕の中に来るとは嬉しいね。誰かさんのお古じゃなければなおさら」
「ちっ、だからなぜ俺がお古なんだ」
「カーチャル、気持ちはわかるが誰かのものになるとお古になるんだ。特にヤン提督とか」

カーチャルはポプランの足をとりあえず踏むつけた。
痛いと騒ぐポプランをよそに、カーチャルはうわの空だった。
そこには帝国への未練があったのかもしれない。ならシェーンコップの意見は正しかった。こいつに言われなければの話だが。
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