ヤン最大の敵
ミッターマイヤーが想像したのとは異なり、ヤンは熱を出し寝ていた。英雄もただの人と言うわけだ。
ユリアンはヤンの看病をするはめになった。
そこに面倒な助っ人まで加わり、ユリアンは疲れた。面倒な助っ人は一度教えたことは全て完璧にこなした。
だからこそ面倒なのだ。やることを取られるので。
「ユリアン、ヤンに報告書は書いたと伝えといてくれ。」
「自分で伝えてくださいよ。短い距離じゃないですか」
ユリアンが文句をいうので仕方なくカーチャルはヤンに報告しようと歩いた。
その時、ユリアンはカーチャルの片眼が異様な光を放ったように見え、怯んだ。
そこに気づいた助っ人は、目をおさえ、申し訳ない顔をした。
「そういえば義眼、手入れしてなかったな。脅かす気はなかった。」
「片眼だけ義眼ですか。」
「そうだ。行け好かない親から受け継いだ嫌な血だ。まだ義手の方がマシさ。義眼よりそっちの方をしたかったな。」
「まさか、家族が嫌で亡命したんですか」
カーチャルは意地悪そうに笑うと、うなずいた。彼女にしてみれば驚くことではない。
「家族が嫌で、困らせてやろうとして亡命。貴族には似合わない性格なもんで。
亡命するならフェザーンより同盟にした方が面白そうだし。帝国と同盟の差、違いも見たかった。
まあ、パウルとかいう兄がいなければ亡命なんかしなかったさ。
そして、亡命後は昇格なしを条件に“薔薇の騎士”には入らず、今の座についた。
亡命嫌いから生き延びるために嫌なことまで身に付けた」
「嫌な特技をすることがないように、提督をお守りします。」
「そうしてくれ。ユリアン、期待してるぞ」
ユリアンは彼女の代わりにヤンに報告書の話をしに行った。あの義眼で会わせなかったのはユリアンの配慮からか。