怒りの代弁

イゼルローンに戻れない彼女は仕方なくハイネセンを放浪していた。
しかもビンを片手に。
元々酔いやすい体質ではない。アッテンボローと飲んだ時は酔いたかったのだ。
フレデリカの父に対する怒りを制圧せず、出しきりたかった。
今回は酔うためではなく、飲み歩きたかったという理由である。
カーチャルは警察に捕まったら困ると頭に走らせたが、肝心な警察の姿がないためすぐに酒を手放すことはなかった。
しかし警察を見かけないのも妙な話だ。
カーチャルがたどり着いたのはハイネセン記念スタジアムだった。
“暴力による支配に反対し、平和と自由を回復させる市民集会”と大胆なスローガンを目にした。
女帝はこれのおかげで酒が飲めるのかと納得し、首謀者候補を頭の中であげていく。
戒厳令により多人数の集会は禁止されている。しかもこのスローガンでの集会とは相当覚悟を決めている。そして首謀者候補の名前があがった。
ジェシカ・エドワーズ
女帝は集会を解散させる必要はないだろうと考えた。
命令は受けていないし、救国軍事会議が勝手に占領したのは事実だし、何より彼女自身集会に賛成派だった。
しかし、彼女は入口が妙にかためられていることに気づいた。
軍が解散させに集会に乱入したにしては厳重すぎた。
もしかすると、穏やかに解散させる気はないのではないか?
カーチャルは酒のビンを片手にハイネセン記念スタジアムに足を踏み入れた。
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テーマ「人外ファンタジー」
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