水平思考の娘
彼女はラインハルト暗殺計画に気づいていたわけではない。
何かがある、それぐらいはわかっていた。
アイスバッハの立場を彼女は考えただけであった。
貴族としてブラウンシュヴァイク公についていた者が、あっさりラインハルトに手を貸すとは思えなかった。
仕えた後に何かを起こすか。彼女はそう考えたが、一番ラインハルトに近づけて成功させやすいタイミングに気づいた。
全員のいる前である戦勝式。
自分の主の遺体にアイスバッハ自身が工作が出来、ブラスターを周りが持つこともなく、ラインハルトに近づける。
マーティルダが目を覚ました時、すでに悲劇は終わりを告げていた。
オーベルシュタインは冷静に彼女に結末を告げ、あることを尋ねた。

「キルヒアイスを殺害した犯人は誰だ」
「それはアイスバッハ・・・いえ、リヒテンラーデ公です」
「そうなるか」

オーベルシュタインは自分と彼女の考えが同じならそれでよし、違えばそれもよし。
マーティルダはオーベルシュタインの意図を察していたため、そう言ったのもあるが、彼女はあらかじめそうなった場合について考えていた。

「申し訳ありませんでした。大事なことにもっと早く気づけていれば・・・」
「意見を聞かなかった私にも責任はある。そうするより自分がすべきことを果たせ」
「・・・!」

マーティルダはオーベルシュタインについて良くも悪くも知っていた。
だからこそ、その発言に驚いてみせた。マーティルダを気づかう発言に対してだ。
彼女はその時決意を固めた。
フェルナーが解毒剤なら、私は中和剤になると。
しかし、彼女が生涯の中で表向きに中和剤になることはなかった。

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