水平思考の娘
この出来事は、オーベルシュタインが彼女に対する価値観を変えた瞬間であり、彼女が成長する切っ掛けになる。
九月九日。ガイエスブルク要塞にて。
勝利の式典が行われようとしている最中、彼女は主のいない部屋でオカリナを吹きならしていた。
戦勝式の始まりが何であるか、彼女は知らなかった。
知ったのはフェルナーがふと呟いたからだ。

「捕虜となった高級士官の中にファーレンハイト提督やアイスバッハがいるそうです。」
「・・・」

彼女は戦勝式の始まりを捕虜になった高級士官の引見からはじまるとは知らなかった。
マーティルダはしばらく黙ったまま立ち尽くし、考えを行動に起こした。
 
オーベルシュタインがマーティルダの思考がラテラル・シンキングと気づいていれば、このような事態は逃れていた。
気づいていたのはロイエンタールぐらいであろう。
マーティルダになにも言わなかった責任はオーベルシュタインにはない。
アイスバッハが主君の遺体に手を伸ばしそのなかから、奇怪な物体を掴んだ瞬間に事は起きた。
アイスバッハがハンド・キャノンを取り出したことに、周りは夢を見ている気分になった。
飛び込めたのはキルヒアイスだけではない。
もう一人飛び込めたのは、マーティルダだった。
警備していた兵を押し退け、広間の扉を大胆に騒がしく開けてみせた。
マーティルダを止めるために走ってきたフェルナーは、広間で起きている出来事に驚きを隠せなかった。
マーティルダは事を予測し、阻止に来たのだが、キルヒアイスはすでに致命傷の傷を背負っていた。
オーベルシュタインはやっと彼女がラテラル・シンキングだと気づいた。
彼女がわざわざフェルナーをつれてきた理由、警備役を気絶させてでも入ってこなかった理由が分かったからだ。
彼女はブラスターを所持していないため、フェルナーを連れてくる必要がある。理由を話す時間を捨てたマーティルダは、わざと騒ぎフェルナーを追いかけ回させた。
警備役は暗殺犯を取り押さえさせる微力にしたかったから。
しかし、マーティルダは自分が遅かったことを悟り、ショックのあまり倒れこんだ。
オーベルシュタインはマーティルダを必要としていたため、フェルナーに指示をした。
彼女にこれからの策を練らせる必要があるのだ。

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