床の上のお姫様
さすがのマーティルダもやり過ぎたと感じたようだったが、ロイエンタールに謝りには行かなかった。
オーベルシュタインはマーティルダに追求せざるおえなくなった。
彼女はふて腐れた顔で、オーベルシュタインと目を合わせないまま言う。

「私を子ども扱いするんだもん。」
「中身が子どもだからだろう」

オーベルシュタインは容赦なく言った。
彼は頭の片隅で、彼女が精神障害の可能性を入れてはいたが、今回それを考慮する必要はないと判断していた。

「中身より外見です。私、そこまで小さくありません。ほら、百五十はありますよ」
「もうすこし、大人しく振る舞えば大人に見えるかもしれないが」

マーティルダはオーベルシュタインの指摘を真剣に受け止めた。
皮肉、嫌味、悪口をそういう形で受け止める彼女だから、彼の部下になれるのだろう。
しかし、やはりロイエンタールに謝る気はないようだ。

 
マーティルダはそれからしばらく大人しく過ごしていた。
周りからは逆に不気味がられた。
いつも誰にでも明るく振る舞う彼女が、誰も寄せ付けないようなオーラを纏っているからだ。
何人かの兵がマーティルダを心配し、話を聞くことにした。
マーティルダは「大人しく」の意味を多少間違って捉えていたのだ。また、いつものマーティルダに戻ると兵の士気まで上昇した。
そんな彼女の耳にも核攻撃の話が入った。
オーベルシュタインの部下だからと言えなくないが、実はラインハルトから意見を言うよう言われていたのだ。
オーベルシュタインは彼女がラインハルトと同様に、攻撃を阻止する構えだと思っていた。

「市民を味方につけるためにもその攻撃をやらせた方がいいと思いますが。」
「オーベルシュタインと同意見か。」
「聞くより見た方が市民を動かすには早いかと。」

言っていることは変わらないが、オーベルシュタインがラインハルトに言ったことを、彼女は言葉を変えて言ったに過ぎない。
オーベルシュタインは彼女がそう言うことに多少驚いてはいただろうが、相変わらず表には出さなかった。
彼女の最大の特徴と言えば、可愛い顔をして冷徹な点である。そして、うむも言わせない態度にある。
「人を和ます華であり、人を見下す氷であり」と二面の顔を見せる。
彼女はいつもは子どもらしく振る舞うが、スイッチが入ると人が変わったかのように雰囲気を変えてみせた。
それが軍に知れ渡るのはまだ先の話ではある。

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