18.薔薇の本数 1/5

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軍属から将校になった軍人はそう少なくはないらしい。しかし、彼女に人事はビッテンフェルトが自由気ままに決めていた点が強かった。反感がなかったわけではなかったが、少なかったことは事実である。オイゲンの次に有力なブレーキ役であり、誰もビッテンフェルトの横で仕事をする勇気がなかったことが多い。今の彼女は大佐付副官という印象だったが、役職や階級を覚えられない彼女には気にすることでもなかった。
カサンドラはブレーキと言っても最終手段の使うようなもの。ワインボトルで殴るブレーキは、効果は高いが副作用も大きいものだ。
そんな危険なブレーキに頼みごとをした勇者がいた。ハルバーシュタット、グレーブナーだ。内容によっては躊躇いなく断れるのだが、この二人はカサンドラに嫌がられる覚悟できたらしい。無駄な覚悟だ、と彼女は笑ってやりたかった。

「で、上官の誕生日を祝いたいと?」

アスターテ会戦が無事に歴史通りに終わり、ラインハルトの元帥昇進が決まった宇宙歴796年2月。ビッテンフェルトの誕生日は道原かつみ版に沿うと2月29日。4年に一度である。この年で29歳。去年なら7歳などと馬鹿にしてやれたのだが、今年はそうはいかない。
2月27日の現在、この二人は明日にビッテンフェルトの誕生日祝いをしたいという。おそらくオイゲンに助けを求めて「駄目」と言われたのだろう。

「私、あの人からプレゼントをもらったことがないので祝う気はありませんが」
「誕生日は気持ちで祝うものですぞ。物ではありません!!」
「良く言うわ。はぁ、ちょっと待っててくださいね」

意地悪いことが効くような二人ではない。男らしい主義に溜め息より呆れてしまうが、この後の歴史を知る彼女には止める理由がなかった。部下に好かれるとは良いことだ。それにまともに誕生日を祝えるとも限らない。祝えるうちにやれることはやってしまわないと損だ。
食堂の料理長との交渉の末に、「パーティー後の後片づけをする」ことで貸し切りに決着がついた。
ハルバーシュタットが食堂の飾り付けを提案したが、カサンドラが睨みつけて制した。掃除をする事になっているのに、わざわざゴミと面倒を増やしてどうするのだ。もっとも、大騒ぎをして嫌でも汚すのだが。
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