14.燃やされた証拠品 1/3

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考えてみれば不思議でもな帝国歴487年にラインハルトはローエングラム伯爵家の門地を継ぐ。しかも、20歳という若さで。今までカサンドラはご都合主義を自身を罵っていたが、運が良いという方向で考えることにした。あと少しでその日が来る。この先、かなり忙しくなる。しかし安定した地位につけば、理菜の所在の調べられるようになるだろう。もう少しの辛抱である。それにこの生活は悪くない。ビッテンフェルトがうるさいこと以外は。
ビッテンフェルトもこの生活は悪くなかった。たった一つ、彼女の本心を除いて。
一度として彼女はこの生活がよいか悪いか、口に出したことがない。極度の恥ずかしがり屋のためがハッキリ言わない。そして、ビッテンフェルトは言われないと気づけない。聞くのは単に怖かったのかもしれない。証拠に、ビッテンフェルトは彼女から昔の話を尋ねたことがなかった。嫌がられるくらいなら良い。もしかすると、傷つけるかもしれないと思うと、踏み出せなかった。

「珍しく二人で休日ですね。」
「どこか行きたいなら付き合うが」
「いえ、別に。強いていうなら羽目を外したいと思いまして」

宿舎で何がしたいのか。すぐに分かった。カサンドラは冷蔵庫から缶ビールを持ってきて、目の前にダースで置いた。朝からビールとは確かに羽目を外している。
彼女はビールを開けるわけでもなく、黙って眺めている。妙な気がしたビッテンフェルトは尋ねた。

「まさか、飲んだことがないか」
「アルコールは全部。ビールなら飲めなくてもビッテンフェルト大佐が飲んでくださるでしょう?」
「ビールは飛びすぎだろ。俺が良いものを買ってきてやろう」

ビッテンフェルトは納得した。外出した先で酒を初めて飲んで、飲み慣れずに酔っぱらう醜態を見せたくないのだろう。こどもっぽいかもしれないが、この手の我儘ならきいてやるのが年上だと、無駄にやる気になった。
ビールは早いと言われたカサンドラは、今日は甘えて待つことにした。愛犬のアルテマが玄関で尻尾を振って待っている光景に、急に微笑ましくなった。自分の妹が四つん這いで歩いていた時、よく追いかけていたものだ。
帰って来た彼はアルテマになにかを与えていた。あれは犬用のおやつと称されるケーキではないか。カサンドラは溜め息をついた。犬の舌が肥えて食費がかかるようになったら、全額負担させることにしよう。

「お前、柑橘系は好きだったな。よくオレンジジュース飲んでる」

正確には蜜柑が好き、であるが指摘しなかった。
買ってきたのはカシスオレンジ。実は一切アルコールを飲んだことがないわけではない。親の日本酒に口をつけたことがある。とはいえ未成年。口に含んだ程度でやめてしまった。この時に実は日本酒はいける事に気づいていたのだが、言わないことにした。
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