45.その日は突然に 1/2

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玄関を覗いた。誰もいなかった。
リナは不用心だと思いつつ勝手に足を踏み入れた。玄関に置かれた花の匂いに誘われて左を見ると、ゆりが飾られてあることに気づく。あまり好きではない匂いだったため足取りが早くなった。
勝手にリビングに上がり込む。物があまり置かれていない。これを綺麗という人もいるのだろうが、物がないからそう見えるだけだろう。
妙に気になる引き出しを見つけた。リナはその引き出しを開けなければならない、と思わされた。理由はわからない。気持ちに対して答えは必要では無い。
赤い手帳があった。気がつけば躊躇いもなく開いた。カサンドラらしいゲームネタ満載な手記の内容に苦笑いしようとした。気配なく影にリナはあっけなく床に叩きつけられた。
鬼の形相で見下ろされたリナはあからさまに動揺しながら声を出そうとする。

「は、ハロー」
「あ、お前だったのか」

カサンドラはそう言いながらもあからさまに嫌そうな顔を向けてきた。

「何してたの、家の鍵が空きっぱなしで」
「愛犬の散歩」
「犬!!名前は?」
「アルテマ」

リナとカサンドラは顔を見合わせ声を出す。

「最弱魔法か」
「ふざけんな、アルテマ弾は国を滅ぼすぞ」

2人が共通の話題を引っ張り出せたことで、今まで埋まっていた距離感が埋まったように感じた。一瞬のことだったかもしれないが、2人にとって気持ちが安らぐ瞬間である。

「で、何しに来たの」
「一緒に買い物を行こうと思ってさ」
「えぇ、行きたくないわ」

即答されたリナは気のせずに見に行きたいものを言い始めた。
女性は買い物が長い。思い当たる人は多いはずだ。男性は買う物や見るものを決めてから行くが、女性は目移りしやすい。だから、テーマパークで夫や彼氏が買い物中の妻や彼女を待つ光景が見れる。カサンドラは男性側にあたる。
ため息をついて行くしかないのが男性である。
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