42.皇帝逝去 1/3

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ユリアンのラインハルトとの交渉。ルビンスキーの火祭り。とうとう皇帝の死までカウントダウンしている中で、カサンドラは読書をしていた。ヒルダの護衛など提督が揃った今では必要がない。そのため、空き部屋で待機していたのだ。不吉なほど静かな部屋に乱暴に扉を開ける音が響いた。

「医者は何をしているんだ、まったく!!」

ビッテンフェルトの理不尽な怒りを、本に目を通す形で無視をした。態度に腹を立てたビッテンフェルトはさらに熱をあげて怒鳴り付ける。

「貴様、なぜそうしていられる。戦場で輝ける皇帝が地上で枯れ果てようとしているのだぞ!!」
「怒鳴ったら病気は治りますか?」
「なんだと!?」
「万能薬があるなら病気なんてなりませんよ」

冷静に言い放された態度に、ビッテンフェルトはカサンドラから本を奪い取った。
その事に怒らず、ビッテンフェルトの顔を眺めた。久々にこの人の顔を見た、などとくだらないことを考えながら。

「なぜそんな冷静にしていられる!?」
「あなたが周りの思いを代弁して怒鳴るから、ではないですか?だから、周囲が感情を爆破させるすべを忘れてしまうのですよ」
「おれのせいか」

一通り爆破しきったビッテンフェルトは奪った本が破けていることに気がついた。謝ろうとすると軍務尚書帰還の通達が入る。カサンドラは破けた本を受け取り、ため息をついた。

「行ってきてください。相手は上官ですよ」
「本は新しく買ってやる。まったくタイミングというものを弁えて来てもらいたい」

無茶です、と言う前にビッテンフェルトが部屋をあとにした。読めなくなった本をゴミ箱に向かって放り投げる。壁にぶつかったもののゴミ箱に入った。
カサンドラは腕時計を眺め、しばらくして立ち上がる。部屋を出て歩きながら、ブラスターの中身を確認した。そして再び腕時計に目を向けたとき、誰かとぶつかった。
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