19.悪意ある人事 2/2

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一,自身の関係を利用しない。
二,不正な制裁、横領、上から目線は絶対禁止。
三,人の話を聞き、共感、質問、提案のスキルがいる。
四,感情的にならない。
五,上司は嫌われるものである。
六,仕事はしよう。

最後はともかく、事実ではある。しかし、頭では理解できていたとして、実行できるとは限らない。
もっとも不当な制裁、横領は彼女が嫌うところ。初日から彼女は前上級曹長の横領の証拠を発見し、報告書を書き上げた。本音は賠償金が欲しいというところ。補給船の維持費が足りないことも計算済だったようだ。さらにカサンドラの昇進に不満があった新兵が五人集まり、罵声を飛ばしたという。ごもっとも、というしかなかった彼女は無視をしていた。しかし、ワインボトルを投げつけ、カサンドラが避けた為に友人のエラが被害にあった。
新兵から信頼を受けたのは白兵戦の訓練のことだった。未訓練の者が来ることはあまりない。しかも女性は特に。それでも、女性教官を探す必要があった。結果、自分でする羽目になった。

「女性の白兵戦訓練の教官をすることになった。まあ、艦隊にいて白兵戦になった時点でその戦争は負けだが。ここの司令官や元帥に対し、そうならないように祈ることをまずは学ばなくてはならん。
さて話は変わるが、身長の低い私に出来るのか教官が、と思った奴はいるだろう?私に勝てると思った奴は男女構わずかかってこい!!罵声なんて下らんマネより良いだろう!!」

名乗りをあげた五人の新兵をコテンパンにし、怒ることなく笑って済ませたという。五人の動きの欠点を指摘して罰することなく場を収めた。彼女は自分の無表情を理解し、仕事の為なら笑顔を作ることも容易だった。
飴と鞭の使い方の上手かったことが「話の通じる人」という評価を作ったらしい。そして、ファンクラブの人たちが再び熱狂したとかしないとか。
この人事の結果が想定以上だったことは言うまでもない。副官のディルクセンと副参謀長オイゲンは、不正疑惑の件を処理しながらその話していた。

「カサンドラは事務は苦手じゃなかったのか」
「実践と訓練で評価が異なる人はいますね。まぁ、閣下と同じく報告書が苦手なんでしょう。どうも報告書というより論文まがいです。ここの予算計算の矛盾指摘が、こちらが読むのも辛くなるぐらい細かいですね」

女性でありながら、珍しい理論的面が強かった事が理由で、本人も気づいていた。

「閣下といえば、今回のカサンドラの人事で被害に遭ってましたね。司令官としては彼女がお飾りにならなかった事は喜ばしい事ですが、男としては困りものでしょう。」
「仕事処理が早いと思ったが、まさか持ち帰っていたのか!!」

ビッテンフェルトからしたら「メリハリがなってない」と言いたいのだが、彼女にしてみれば「溜めてしまえば仕事が滞る」といったところか。
だからといって、ビッテンフェルトが手伝うのかという問題は目に見えていた。
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