18.薔薇の本数 4/5

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パーティー終了ごろを見計らい、食堂の戻るとグレーブナーとオイゲンに呼び止められた。片づけはやるのでビッテンフェルトを連れて帰れというのだ。この二人の主張はもっともだった。カサンドラが片づけを手伝えば、ビッテンフェルトが帰るはずがない。主役に片づけをさせるわけにはいかない、と言いたいらしい。これも仕事のうち、と言い聞かせて従うことにした。恩人の一人であるオイゲンには頭が上がらないところがあるようだ。
帰宅は地上車でさっさと済ませても良かったのだが、ビッテンフェルトが歩くと言ったので従った。食堂を出た事を叱られる気がしたので、刺激しないように大人しく従うしかなかった。
主役にこれ以上の反論はよそう。今日は充分遊んだので。
ビッテンフェルトの横に立って、カサンドラは足りないものに気づいた。

「アルコール、飲まなかったんですか」
「酔った勢いは嫌だろ?」
「は?あっそうだ。ミッターマイヤー少将、ロイエンタール少将より誕生日プレゼントをお預かりしてます。ワインです。これで飲めますよ」
「全く、タイミングが悪いな二人は。下手したらやけ酒にだな・・・・・・」
「やけ酒の予定があるんですか」

どんな未来設計図か。案外何も考えていないだけかもしれない。
ビッテンフェルトの良い点は目の前の目標までの最短距離を出すことである。これが彼の主戦論につながっているが、それは日常においてもそうであった。
その反面、カサンドラは「感じることより考える事を優先する」理論家な面がある。ビッテンフェルトをしばしば困らせると同時に、彼に振り回されることになる。立場や考えをはっきりさせるように迫られた場合や論理性に欠ける議論を強制された時に思考が停止する面もあった。
帰宅してビッテンフェルトが起こした行動を理解するまでに、時間がかかった理由はこれらにあったのかもしれない。
精神的に疲労していたカサンドラは、さっさと寝たかったのだが、視覚と嗅覚が刺激されて目を見開いた。薔薇は種類によって香る場所が異なるという。品種改良が進み見た目が重視され、香る薔薇はそう見かけなくなった。あくまで現代の話。
ちなみにカサンドラは薔薇を見て、疲れが襲ってきたようだ。ビッテンフェルトの体格に合うだけの薔薇の数。数える気が失せた。そして、大量の赤い薔薇とは目を痛くすることを知った。

「・・・・・・」
「・・・・・・」
「あの、なんですかこれ。私の誕生日プレゼント、というわけではありませんよね」

真偽が分からないうちは「センスがない」とは言わないことにした。黄色のつぼみだったら馬鹿にしようもあるのだ。花言葉は「笑って別れましょう」だけに。
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