2.現実的に甘くない 2/3

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目を覚ましてしばらく、夏目は状況理解に苦しんだ。
まず一つ目。自分は電車にあれから牽かれたのかわからない。痛みも恐怖も目を覚ましてから感じなかった。この辺は曖昧らしい。事故のあとの混乱状態か、これにはまだ判断材料が足りていない。
二つ目。ここは病院ではない。誰かが住んでいる部屋ということは見ればわかる。クローゼットがある時点で生活感がある。死後の世界など、ありがちなことを考えてみたが、非現実的なのでやめておいた。もしそうだったとして、早い段階で決めつけたら発狂しそうだ。
三つ目。カレンダーが読めない。日本語ではないようだ。日本の外国の人の住まいか。誘拐の線も考えられたが、自分の記憶と辻褄が合わないのでなしにする。
結果として非現実的な事態を考慮しなければ、今の現状を理解できないと悟った。

「SAN値ピンチ・・・・・・笑い事じゃないのに」

部屋の探索を開始した。最低限、この部屋の住人の人を知ることが必要だろう。話す際に性格を理解しているだけでも、心構えは違うものだ。
気になるのは読めないカレンダー。日本語ではない。読めるものは数字ぐらいだ。485という数字は年号だろうか。大きな赤い字で何か記載されている。正直この文字がでかすぎて、カレンダーが意味を成していない。

「lser・・・・・・汚すぎて読めねぇ。
あれ?これはイゼルローンって読むか?"lserlohn"でスペル合ってないか。
ということは、帝国暦485年第六次イゼルローン攻防戦のこと?
どんだけ楽しみにしてるのよ。してたかもしんないけど」

あっさりと口に重要な事を言ったのだが、緊急事態過ぎてすんなり受け入れてしまった。ここは銀河帝国で、今は帝国暦485年である。第六次イゼルローン攻防戦がこれかあるのか、終わったのかは不明。
そうなるとこの部屋は軍人のものらしい。わかった今、夏目は血の気が引いた。
選択肢を間違えたら死ぬ。しかもどんな軍人に拾われたかによっては、どれを選んでも、「どうあがいても絶望」のキャッチフレーズがお似合いな事態になるではないか。ミッターマイヤー提督に拾われるなら、ご都合主義らしい養子選択もあるかもしれない。しかし、ミッターマイヤー以外の場合、どの軍人が来ても助かる道が見当たらずにいた。逃げたいが、逃げ出しても生きていく術はない。こうなったらどうにかして、打開策を練る他ないだろう。
もしかしたら、拾ってたのはモブキャラではないかもしれない。ラインハルトに仕えることになる帝国の上級大将相手なら、対策もねられるはずだ。彼女はこの部屋の主の特定を始めた。
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