18.薔薇の本数 2/5

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イベントごとの参加することは苦手だった。高校時代の文化祭は遊びまわった経験がない。クラスの出し物の仕事をし、部活の部長として仕事をし、所属していない委員会の仕事をし、文化祭の二日間が過ぎた。高校時代は真面目にしていたため、関係ない委員会の仕事を任せてもらえた。生徒会に入っていた生徒よりも多忙だったことは、生徒会の生徒が一番よく知っていた。なぜなら、生徒会の生徒半分以上が、後輩か仲の良い同級生で構成されていたからだ。
遊んで楽しむことより、仕事をして充実感を得ることが合っていた。それだけのことであった。そのせいか、彼女は食堂のセッティングを終えると何をしてよいかわからなかった。愛する上官を祝う楽しみで盛り上がる男どもを眺めるが退屈で欠伸が出た。
欠伸していたため、ビッテンフェルトが来た際の反応が遅れ、ずれたタイミングで手元のクラッカーを引いた。しかも、自分の顔すれすれに。

「お誕生日おめでとうございます!!」

全員が言う中で、彼女は黙ってその光景を眺めていた。祝いたい部下しかいない食堂で、一応彼女の祝ってはいるのだ、これでも。祝う気がないなら、ケーキのプレートを自分で書かないだろう。問題は書いた内容である。部下一同怒ることを覚悟して耳をふさぐ準備をした。
「30歳まであと1年のカウントダウン」と書かれたプレートを見て、文字通り静かな沈黙が訪れた。ビッテンフェルトが年齢を気にしているとは思わないが、敢えて触れる必要もない。

「お前な、誕生日を祝う気があるのかないのか!!」
「あるから自分で書いたんです。」

揉め出す前にオイゲンが口をはさんだ。

「と、とりあえず、ろうそくを消しましょう」

そう言って返答を待たずに電気を消した。
暗闇の中、彼女は食堂を出た。気づいたのはビッテンフェルトとオイゲンだけだった。
彼女がイベントが苦手であることには気づいていた。また群れること、騒がしいことも好きではなかった。男どもが騒ぎ立ってるのを見ていてもおそらく寝てしまうだろう。これは彼女の不器用な気遣いだった。主役に退屈な顔を見せるわけにはいかないだろう。「無粋な女は抜きにして楽しんでくださいね」と、わざわざアルコールの許可までおろしてきたのだった。
オイゲンは彼女がいない事を確認してから、カサンドラをフォローする形で話した。

「実はこのプレート、何度も書き直していたんですよ。」

はじめは普通におめでとうと書いていたのだが、どうやら恥ずかしかったのだろう。バリエーション豊かだったプレートを全部口に入れてしまい、見抜けぬ人には怒りの顔にしか見えない形相で書きあげた。

「怒らないであげてください。悪気はないんです。貸切の交渉も、アルコールの許可もカサンドラがやってくれたことですから。で、何をお飲みになりますか。」
「やりたくないなら、やらなきゃいいんだ。
ビール・・・いや、ノンアルコールで良い」
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