14.燃やされた証拠品 3/3

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寝ているカサンドラの頭をなでた。起きそうにない事を確認して、ビッテンフェルトはクローゼットからあるものを取りだした。
彼女に黙って隠し続けていたもの。
酔った彼女はハイテンションに自分が今を楽しんでいる事実を打ち明けた。こうしないと聞けないことに腹立たしさもあったが、純粋に喜ぶことにした。「嫌いだったら結婚でもして出ていくわ」とわめいた時は何事かと思ったほどだ。正直に言えば愚痴の方が多かった気がした。
“彼女に黙って隠し続けていたもの”を持って、ビッテンフェルトは人気にない草むらに向かう。キャンプに使われるような場所だ。煙が立っていても怪しまれることはないだろう。
このことを知ったらカサンドラは怒るだろうか。
一度オイゲンに、彼女は同盟のスパイではないのかと言われたことがあった。それはないとだいぶ前から確信していた。しかし、そう思った理由を決して口にはしなかった。彼女はそれを隠しているのではないかという疑いと、自分の推測があまりにも非現実的だったから、という二点だ。
そして、やっと確信した。この二点が間違いではなかったことを。カサンドラが酔った拍子に言った些細なことだった。隠したい意識が強ければ、酔っても簡単には話さない。そのため、直接的なことではなかった。
焚火なんてする気はなかった。燃えている炎を見ながら、思う。こんなことをするのはどうも性に合わないと。
“彼女に黙って隠し続けていたもの”これを捨てるのは彼女のためである。もし何かの拍子でこれを自分以外の誰かが見たら、カサンドラの、いや彼女自身の身が危ない。彼女が敵ではないと確信しているビッテンフェルトは、“彼女に黙って隠し続けていたもの”は不要な品だった。

「スパイがこんなものを持ってやって来るものか」

暇つぶしのジョギングで拾ったもの。それが彼女だった。そしてもう一つ。
“彼女に黙って隠し続けていたもの”―彼女のスクール鞄の中身まで燃えたことを確認し、ビッテンフェルトは宿舎に戻った。
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