1.私という小娘が 2/2

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「ねえ、あいつらなんなのよ。
理解してないっていうか、聞いてないっていうか。
みんな一人っ子だから理解できないとか?」
「夏目、私も一人っ子だよ」
「・・・・・・そういう意味じゃない」

長い愚痴をしばらく聞かされ続け、学校の最寄りの駅に着いたところで解放された。
次の話題は古いゲームで面白いもの。最近のゲームで燃え上がるほど楽しいものがないのだろうか。現代っ子で都会っ子のわりには、PSとFC世代のゲームの話になる。今ではネット環境とPS4と3DSとスマホでほとんどのゲームができる時代だ。夏目はコアユーザーだから、スマホゲームはしないだろうが。

「ファイアーエンブレム覚醒やっててさ、いつの間にか通信でもらえるマルスで金稼ぎしてたんだけどさ。
マルス絡みの主人公だけあってクロム魔防ねぇなって思って」
「え、いきなり3DSだね。
バイオ初代からやればいいじゃん。」
「狩りゲーに興味なし。サイレントヒルやSIRENはやれるけど。犬屍人かわいい」
「あぁ、もうだめだ、この子。バイオ狩りゲちゃうし。」

ホームに着いてからもこんな会話が続く。
日常的すぎて、むしろこれがあるから二人は仲がいいとさえ思う。口が悪くても趣味は共通してゲーム。周りからは夏目が理菜を嫌っている形に見えるらしいが、単純に口が悪いのは仲が良いからできること。本当に仲が悪いならゲームなんて貸せない。互いにわかっているから、今が楽しいのだ。
夏目が次の電車を確認するために、理菜から目を離した。理菜も夏目から目を離し、向かいのホームを見る形で向きを変えようとした。
いきなり誰かに押されて体勢を崩した理菜。気づいた夏目がすぐに手を伸ばす。理菜は手を掴もうと、夏目も手を掴もうと互いに伸ばした。手が届きそうで届かない。夏目は意地でも掴んでやろうと飛び出したが、相手には来てほしくなかった。

互いが視界の端に捉えたのは、この駅を通過する快速電車だったから。
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