8.心配性な猪 2/3

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その先にいたのはカサンドラであった。
紙袋と犬のリードを片手で持っていた彼女は、迷子になっていた。いつも行かない店に長居していたら、もと来た道を忘れていたようだ。
気づけば夜になり、カサンドラは横を歩いているアルテマに目を移した。小さな声で謝罪をする。今度、いつもより良い餌をあげようと決めた。
見慣れない道に困りつつも、体力は余っていた。軍に所属したことで体力がある程度はついたようだ。
突然アルテマが後ろを向いて立ち止まり、カサンドラは危うく転びそうになった。彼女はアルテマを覗きこむ。するといきなり吠えたので、また転びそうになった。
カサンドラの教育方針上、アルテマは無駄吠えをしないように教わっている。また、犬の服従関係図を把握している彼女は、アルテマの中では立場が上であるように教育されていた。
ここで吠えることが、異常事態を告げていると気づけたのだ。
暗闇から異質な気配に気づいたカサンドラは、アルテマを引っ張ろうとする。片腕ではうまくいかない。包丁が見えて、彼女はやっと口を開いた。

「にげるよ!?命の方が大事なんだって。
アルテマ、頼むから動け!!」

紙袋とリードを邪魔に感じた彼女は、躊躇わず地面に落とした。転がる食べ物を勿体ないと思う暇もなく、彼女は走ろうとした。
しかし、アルテマがついてこない。盾になるつもりであると感じた主人には、置いて逃げる勇気はない。片腕のみで戦うなど無茶とわかっていたが、カサンドラはブラスターを取り出した。鷹の目並みの命中率が欲しいと思いながら狙いを定めようとするが、腕がぶれて定まらない。至近距離で一発で動きを止める必要があるように思う。
そこでアルテマが動く。足を噛みつかれ、包丁を振り回そうとする男に、彼女は地面に転がる林檎を投げ付けた。
踏みつけられたアルテマは、地面に倒れこむもすぐに起き上がる。狙われた彼女は、片腕なしでバランスが取れない中、ギリギリで包丁を避けていた。隙を見て蹴りを入れようと思ったのだが、バランスを崩しかねない。
転んだ彼女は右目の上が斬られていることに気づくも、気にしている場合ではない。自分に包丁が降り下ろされるところが視界に入ったのだから。
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