46.損な役回り 2/2

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※死ネタ注意
メックリンガーはたまたまビッテンフェルトの自宅の前を通っただけだった。綺麗な蝶を見かけて気まぐれに普段は通らない道を歩いていた。
他人の自宅を不審そうに眺めるご婦人方を見て、話しかけた。街の治安維持が今現在の軍人の務めである。自ら街に寄り添わなければ、これから先の軍人に未来はない。そう考えていた。
軍服を着た人に話しかけられたご婦人は戸惑いながらも喋りだす。

「この家、2時間もシャワーの音がするのよね。お掃除で出しっぱなしにすることはあるけど、1度も止めないなんてあるかしら」

ビッテンフェルトがいくら猪などと言われるような男でも、家計に被害を及ぼすような水の使い方はしないだろう。シャワーの音よりもメックリンガーは足音がしないことの方が不審だった。

「ふむ、わかりました。ここは私が見に行きます。貴重な情報をありがとうございます」

頭を下げられ動揺するご婦人方は、慌てたように小走りで去っていった。まだ軍人と言うだけで恐れられてしまう時代。いずれは平和に芸術と戯れる日々が来るだろうか。メックリンガーは自分のこれからの未来に願いを込めつつ、玄関をノックしてみる。
反応がない。シャワーの音も止まらない。庭に植物が植わっていないことを確認し、掃き出し窓を覗いてみようとしたがカーテンがかかっていた。玄関を壊して中に入ろうと思ったが、触ってみて、窓ガラスが自力で割れる可能性が高いと気がついた。
仕方がなく近所の方からマイナスドライバーを借りてパッキン部分を狙って割ることにした。2分から3分ほどかかってやっと侵入できた。
すると愛犬と思われるゴールデンレトリバーに吠えられた。それでもシャワーの音が止まらない。
胸騒ぎがする中、メックリンガーは風呂場に足を踏み入れた。
全裸で倒れているビッテンフェルト。出しっぱなしの水。明らかに事故死だった。ヒートショックを疑ったメックリンガーだったが、床に転がった固形石鹸が目に入った。
ひとまず水を止めた。このままでは腐敗が進んでしまう。そして憲兵と救急車を呼んだ。
カサンドラがいないことに気がつき、頭を抱えた。なぜ私がこういう役回りなのだろう、と。
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