44.食文化 主に生魚編 2/2

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ある程度食べると、エルガーはお腹がいっぱいになり、食事に飽きてしまったらしい。落ち着きなく足を椅子にあげようとしたり、意味もなくコップに口をつけたりしている。そのたびにワーレンが怒っている。カサンドラはエルガーを軽々持ち上げ、テレビ前に座らせた。

「私も飽きちゃったから一緒にゲームしようか」

どこからかテレビゲームを持ってきた。
ビッテンフェルトは残った刺身を酒のつまみにしようと、キッチンからワインをボトルで持ってきた。

「子供がいると酒は気を使うから遠ざけてくれたんだろう」
「ビッテンフェルトが頭が上がらない理由か」
「ああいう奥さんが小官にもほしいものです」

ビッテンフェルトは各自のグラスにそそぎ、ミュラーに「あいつはやらんぞ」とつぶやいた。
ゲームをしている二人はなにやら騒いでいる。どうやらカサンドラが加減なしにこてんぱんに負かせたらしい。

「そういえば、お二人はお子さんいませんよね」
「実際産むのは女だからな。あいつが嫌なら無理だろう」
「ビッテンフェルト提督はほしいとは思わないんですか」
「おれが世話をできると思うか」

提督二人は顔を見合わせた。正直、良い父になれると思ったからだ。しつけと遊ぶときのメリハリがはっきりする良い父に。本人がそう思っていないのなら何を言っても仕方がない。第一に子供を授かるには歳を取りすぎていた。カサンドラは問題なくてもビッテンフェルトには歳が大事な問題としてのしかかるだろう。いくら金には困らないような立場とはいえ、育児のために必要な時間がカサンドラよりも少ないのだ。

「あいつは、欲しかったのかもな。」
「今からでも遅くないと思いますが」
「産まないのではなく産めない、か。」

部屋がやけに静かになった。テレビゲームの音がなくなっていた。カサンドラはエルガーが寝ていることを確認して、三人に顔を向けた。
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